LDES(Long Duration Energy Storage )とは「長期エネルギー貯蔵」のことです。この記事では、クライメートテックの中でも注目が集めるLDES(長期エネルギー貯蔵)について解説します。
概要:
Long Duration Energy Storage(LDES)は、エネルギーを効率的に貯蔵し、必要なときに使用できるようにする技術の総称です。これは主に再生可能エネルギーのインターミットンシー(断続性)や需要ピーク時に電力供給を安定化するために使用されます。短時間のバッテリーストレージとは異なり、LDESは数時間から数日間にわたるエネルギーの保持が可能です。
主な貯蔵方法:
LDESにはさまざまな貯蔵方法があります。以下にその主な種類をいくつか挙げてみましょう。
- 圧縮空気エネルギーストレージ (CAES): オフピーク時にエネルギーで空気を圧縮し、需要が高まるときに空気を放出して発電機を回す方式。
- 水力蓄電池: 高低差のある地形を利用し、水を上げ下げして発電機を回す方式。
- 熱エネルギーストレージ: 高温の蓄熱材を使用してエネルギーを蓄え、必要なときに蓄熱材を通して発電機を駆動する方式。
- バッテリーストレージ: 長時間の蓄電が可能な新しいバッテリーテクノロジーもLDESの一環として研究されています。
- このほかにも、以下のようなクライメートテック関連のスタートアップが、新たな貯蔵方法を開発しています。

カーボンニュートラルの達成に必要な理由:
- 再生可能エネルギーの変動: 再生可能エネルギー源(風力や太陽光)は天候に依存しており、供給は一定ではありません。LDESはこれらの変動を補完し、持続可能なエネルギーシステムの実現に寄与します。
- グリッドの安定性: 電力供給の断続がないことは、エネルギーインフラの安定性に不可欠です。LDESは電力グリッドの頻繁なピーク需要や需要の低い時間帯に対処し、安定性を向上させます。
- 非発電期間の対処: 再生可能エネルギーが得られない期間(風が吹かない夜間など)に対応するためには、LDESが必要です。これにより、カーボンニュートラルなエネルギーシステムが実現できます。
LDESは、エネルギーの持続可能性と安定供給に向けて進化し続けており、将来のエネルギーランドスケープにおいて重要な要素となるとみられています。
主なLDES技術の比較
| 技術分類 | 代表技術 | 貯蔵時間 | エネルギー密度 | 往復効率 | コスト(2024) | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 電気化学 | フロー電池(バナジウム/亜鉛臭素) | 4〜100h以上 | 低(25〜50 Wh/L) | 65〜80% | $200〜400/kWh | 容量と出力を独立に設計可能。長時間・大容量向き。腐食性媒体の管理が課題。 |
| Fe-Air / Zn-Air 電池 | 100h以上 | 低(50〜70 Wh/L) | 50〜70% | $20〜50/kWh(目標) | 鉄・亜鉛という安価な材料を使用。Form EnergyのFe-Airが注目(2020年代後半商業化目標)。 | |
| 機械的エネルギー | 揚水発電(Pumped Hydro) | 6〜数百h | 極低(地形依存) | 70〜85% | $50〜200/kWh(設置済み) | 世界のLDES容量の95%以上を占める。立地制約大。日本では約2,600万kWの設備容量。 |
| 重力エネルギー貯蔵(GES) | 4〜24h | 中 | 80〜90% | $100〜250/kWh | 廃坑・高層ビル等を使用した重力ポテンシャル活用。立地制約が揚水より緩い。Energy Vault等が開発中。 | |
| 熱エネルギー | 溶融塩蓄熱(LTES) | 4〜15h | 中(150〜300 kWh/m³) | 90〜95%(蒸気で戻す場合) | $15〜40/kWh熱 | CSP(集光型太陽光)と組み合わせた実績多。電気→熱→電気で効率低下。 |
| ヒートポンプ蓄熱(Carnot Battery) | 4〜24h | 中 | 50〜75%(電→電) | $50〜150/kWh | 余剰再エネをヒートポンプで蓄熱→オーガニックランキンサイクルで発電。欧州で実証中。 | |
| 水素・Power-to-X | 電解水素+燃料電池/ガスタービン | 数週間〜季節 | 高(エネルギー密度は高いが設備体積大) | 25〜45%(往復) | $300〜1,000/kWh | 季節間貯蔵(夏の太陽光→冬に放電)に対応できる唯一の実用的技術。効率の低さが課題。 |
| CAES | 圧縮空気エネルギー貯蔵 | 4〜24h | 低(地下空洞依存) | 50〜75%(断熱CAESでは高効率化) | $50〜150/kWh | 岩塩空洞・廃鉱山を活用。ドイツで商業運転事例。断熱(A-CAES)で効率改善研究中。 |
GXとLDESの政策・市場動向
- IEA試算:2050年NZに必要なLDES容量:IEAのNZE(Net Zero Emissions by 2050)シナリオでは、2050年までにLiB短期蓄電(4h未満)の30倍以上のLDES容量(10TWh超)が必要とされる。現在の世界LDES容量(揚水除く)は約数GWhにとどまる。
- 日本の政策:GX実現基本方針(2023年)では「革新的蓄電池」の開発支援を明記。NEDOのグリーンイノベーション基金がフロー電池・LDES技術への投資を支援。日本の揚水発電拡充計画では2030年代に約400万kWの増強が計画されている。
- 市場と投資動向:BloombergNEFの試算では、2040年までのLDES市場規模は3〜5兆ドル。米国のInflation Reduction Act(IRA)ではLDES向け投資税控除(ITC)が適用され、2022〜2023年に大型投資が相次ぐ。Form Energy・EnerVault・Malta等のスタートアップが大規模実証に移行。