グローバルサウス(Global South)は、通常、経済的に発展途上国である地域や国々を指す用語です。この用語はしばしば「開発途上国」とも呼ばれ、主にアフリカ、ラテンアメリカ、アジアなどの地域を含みます。グローバルサウスは、一般的に経済的に豊かな国々である「グローバルノース」(Global North)と対比されます。
気候変動問題におけるグローバルサウス
気候変動の文脈において、グローバルサウス(経済的に発展途上国や途上国とも呼ばれます)が重要な理由は以下の通りです。
- 排出の増加:
グローバルサウスには急速な経済成長と都市化が進行しており、これに伴いエネルギー需要も増加しています。多くの途上国は化石燃料を主要なエネルギー源として使用しており、これが二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を増加させています。したがって、気候変動の大きな原因の一つとして、グローバルサウスの排出が増加していることが挙げられます。 - 脆弱性:
多くの途上国は気候変動に対して脆弱であり、極端な気象事象、海面上昇、食糧不足などの影響を受けやすい地域があります。農業、漁業、水資源など多くのセクターが気候変動に影響を受け、これが飢餓や避難民問題などを引き起こす可能性があります。 - 不平等と責任:
過去の数世代にわたり、工業化が進んだ国々が大量の温室効果ガスを排出し、気候変動を引き起こしました。しかし、途上国はこれらの排出に対する責任を負っておらず、またその影響も最も受けやすい立場にあります。気候変動問題における公平性は重要であり、適切な対策や資金の提供が求められています。 - 国際協力:
気候変動は国境を越えた問題であり、国際的な協力が不可欠です。パリ協定などの国際的な合意において、途上国と発展途上国の協力が必要です。気候変動の対策において、途上国の協力なしには効果的な解決策を見つけることは難しいでしょう。 - 新たな可能性:
途上国は新たな環境技術や再生可能エネルギーの普及を促進する機会を持っています。これにより、経済の持続可能性を向上させ、新たな産業を育て、同時に気候変動の影響を軽減することができます。
グローバルサウスの役割は気候変動問題の対処において不可欠であり、国際的な協力と支援が必要です。気候変動に対処するためには、途上国との連携を強化し、排出削減、適応策の実施、技術移転、資金提供など、包括的なアプローチが求められます。
グローバルサウス主要国の気候変動立場と排出量
| 国・地域 | CO₂排出量(2022年、世界シェア) | 気候交渉上の主な立場 | COP30(2025年、ベレン)での重点議題 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 約30%(世界最大) | 「先進国の歴史的責任」を主張。途上国として適応資金の受取国立場も維持。2060年カーボンニュートラル目標。 | NDC(国別目標)の2035年版策定と、先進国の気候資金拠出コミットの法的拘束力化 |
| インド | 約7%(第3位) | 1人当たり排出量が少ないことを主張。2070年ネットゼロ目標。再エネ拡大を推進しつつ、石炭依存からの転換には時間が必要と主張。 | 技術移転・気候資金の透明性。途上国のエネルギー転換支援 |
| ブラジル | 約3%(森林吸収源が大きい) | アマゾン保護と熱帯雨林の炭素価値を主張。COP30ホスト国として合意形成に積極的役割。 | REDD+・森林クレジットの国際ルール(Article 6)確定、損失と損害基金の本格稼働 |
| インドネシア | 約2% | 石炭・パーム油産業を抱えつつ、JTF(公正な移行)支援を要求。JCM(日本との二国間クレジット)活用に積極的。 | 島嶼国の適応資金・海面上昇対応への財源確保 |
| アフリカ諸国 | 合計約4%(1人当たりは極めて低い) | 歴史的排出量への責任は先進国にあると主張。適応資金の増額と、エネルギーアクセス確保のための開発権(Right to Development)を要求。 | 損失と損害基金への拠出額の大幅増加 |
気候資金の主要メカニズム
| 資金メカニズム | 概要 | グローバルサウスとの関係 |
|---|---|---|
| GCF(緑の気候基金) | UNFCCCの主要資金メカニズム。緩和・適応プロジェクトへの資金拠出。2023年補充で目標額97億ドル(2024〜2027年)。 | 途上国が最大の受益者。日本は最大の拠出国の一つ(15億ドル以上)。 |
| 損失と損害基金(L&D Fund) | COP27(2022年シャルムエルシェイク)で設立合意。気候変動による不可逆的な損失(海面上昇・極端気象)への補償的資金。 | 最脆弱国(小島嶼国・LDC)への重点支援。2023年COP28でWBが運営機関に決定。当初コミット7億ドル超(規模は不足と批判)。 |
| NCQG(新規集団数値目標) | 2025年以降の気候資金新目標。先進国の年1,000億ドル目標に代わる新たな数値。COP29(2024年バクー)で交渉中。 | 途上国は年4,000億〜1兆ドル超を要求。先進国との差は大きく、COP30での決定が焦点。 |
| JCM(二国間クレジット制度) | 日本が推進するパリ協定6.2条に基づく二国間協力。途上国でのGHG削減プロジェクトを支援し、日本のNDC達成にも活用。 | 29か国と協定(2025年時点)。インドネシア・タイ・ベトナム等のグローバルサウスが対象国の中心。 |
COP30(2025年、ベレン)とグローバルサウスの交渉焦点
- NDC 2035年版の提出:パリ協定締約国は2025年にNDC(国別貢献)の2035年版を提出する。グローバルサウスのNDCは「条件付き目標(気候資金支援を前提)」と「無条件目標」の二段階構造が多く、先進国からの資金・技術移転が実施を左右する。
- 損失と損害の本格実施:COP27で設立された「損失と損害基金」の拠出規模・アクセス条件の確定。小島嶼国(SIDS)や後発開発途上国(LDC)は資金のグラント(返済不要援助)化を求める。
- グローバルストックテイク(GST)の実施:AR6を踏まえた「グローバルストックテイク(GST)」の結果(COP28で初回実施)を受けた、各国NDCの野心引き上げ圧力。グローバルサウスは先進国の削減責任強化と引き換えに、自国の目標引き上げを協議。