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HFC(ハイドロフルオロカーボン・Hydrofluorocarbon)とは?GWP・地球温暖化係数と冷媒代替・キガリ改正による規制を解説

HFCは「ハイドロフルオロカーボン(Hydrofluorocarbon)」の略で、冷媒やエアコン、冷蔵庫、発泡剤、エアロゾルなどの製品で広く使用される化合物です。HFCはオゾン層破壊には影響が少ないとされる一方で、非常に強力な温室効果ガスであり、地球温暖化への影響が懸念されています。

概要

HFC(ハイドロフルオロカーボン)は、冷媒やエアロゾル、発泡剤、消火剤などに使用される人工的な化合物です。HFCは、CFC(クロロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)に代わるものとして開発されました。CFCやHCFCはオゾン層を破壊する物質として国際的に規制されており、それに代わるものとしてHFCが広く普及しました。HFCはオゾン層を破壊しないため、環境に優しい代替品として期待されてきましたが、実際には強力な温室効果ガスであり、地球温暖化への影響が深刻です。

地球温暖化の原因となる理由及び温暖化係数

HFCが地球温暖化の原因となる主な理由は、その温室効果ガスとしての特性にあります。HFCは、二酸化炭素(CO2)に比べて非常に高い温暖化係数(GWP: Global Warming Potential)を持っています。温暖化係数とは、ある物質が地球温暖化に与える影響をCO2と比較した値です。

例えば、HFC-134aという一般的なHFC冷媒は、100年間のGWPが約1,430とされています。これは、同量のCO2が地球温暖化に与える影響の1,430倍に相当します。HFCが大気中に放出されると、その強力な温室効果によって地球温暖化が加速されるため、近年ではその削減が国際的に求められています。

HFCの解決方法

HFCによる地球温暖化への影響を軽減するための解決方法には、以下のようなアプローチが考えられます。

  • HFCの代替品の使用: HFCの使用を削減するためには、GWPが低い代替品の導入が必要です。例えば、自然冷媒(アンモニア、二酸化炭素、炭化水素など)や、新しい合成冷媒が考えられます。
  • HFCの回収と破壊: 使用済みのHFCを回収し、適切に破壊することが重要です。これにより、HFCが大気中に放出されるのを防ぎます。
  • 国際的な規制: HFCの生産と使用を規制する国際的な協定が重要です。例えば、モントリオール議定書のキガリ改正により、HFCの段階的な削減が進められています。

キガリ改正は、議定書の規制対象物質に HFC を追加し、現行議定書下でオゾン層破壊物質に対して行われる規制と基本的に同様の規制を、HFC にも適用するというものである。
具体的には、HFC の生産量・消費量(生産量+輸入量-輸出量)の段階的な削減、HFC の輸
出入に関するライセンス制度の創設、HFC の生産量等に関する資料の提出、製造設備から
排出される一部 HFC の破壊、などが新たに規定されることとなった。また、HFC の数量の
指標として GWP(地球温暖化係数)を採用することとされた。
キガリ改正によって、我が国を含む先進国においては、HFC の生産量と消費量について、
2011 年から 2013 年までの平均数量等を基準値として、2019 年から削減を開始し、2036 年
までに 85%分を段階的に削減していくことになる(図表1参照)が、その特徴としては、
以下のような点があげられる。
・最終目標値は撤廃ではなく基準値の 80~85%の削減であり、最終目標年以降も 15~
20%の使用が認められていること。
・途上国の削減スケジュールが2つのグループに分けられていること。
・途上国の基準年が合意後4年~10 年後となっていること。
・2022 年以降5年ごとに技術評価が実施され、削減スケジュールの検証が行われること。

出典:環境省 https://www.env.go.jp/content/900422743.pdf

4. HFC関連のスタートアップ

1. A-Gas

  • 国: イギリス
  • 資金調達ステージ: プライベート(非公開企業)
  • 概要: A-Gasは、HFCを含む冷媒の回収、再生、破壊を行う企業です。同社は、使用済み冷媒の回収とリサイクル技術に注力しており、環境に配慮した冷媒管理ソリューションを提供しています。彼らの技術は、HFCの大気中への放出を防ぐことに大きく貢献しています。
  • HPのリンク: A-Gas

2. ClimaCell

  • 国: アメリカ
  • 資金調達ステージ: シリーズB
  • 概要: ClimaCellは、自然冷媒を利用した冷却システムの開発を行っているスタートアップです。従来のHFCを使用した冷却技術を代替するためのソリューションを提供し、温室効果ガスの削減を目指しています。同社の製品は、GWPが低い自然冷媒を使用し、エネルギー効率も向上させることで環境負荷を低減しています。
  • HPのリンク: ClimaCell

3. GreenChill

  • 国: ドイツ
  • 資金調達ステージ: シリーズA
  • 概要: GreenChillは、HFCフリーの冷却ソリューションを提供するスタートアップで、特にスーパーマーケットや商業施設向けの冷蔵技術に特化しています。彼らのシステムは、CO2などの自然冷媒を使用しており、従来のHFCを使用した冷却装置に比べて大幅に温暖化係数を低減します。
  • HPのリンク: GreenChill

GWP の数値は「どの評価報告書の版か」「何年で評価したか」で変わる

GWP は固定された物理定数ではなく、IPCC の評価報告書が改訂されるたびに見直される推計値である。同じ HFC-134a でも、IPCC 第4次評価報告書(AR4)の 100 年 GWP は 1,430、第5次評価報告書(AR5)では約 1,300、第6次評価報告書(AR6)では約 1,500 とされる。値が動く理由は、放射強制力の計算手法や大気中寿命の推計、気候のフィードバックの扱いが更新されるためである。

実務で重要なのは、制度ごとに「どの版を使うか」が指定されている点である。日本の地球温暖化対策推進法に基づく算定・報告・公表制度やフロン排出抑制法は AR4 の値を基準として運用されてきた。一方、EU の F ガス規則は改正の過程で AR5 ベースの値へ移行しており、同一の冷媒でも日本の報告値と EU 向けの報告値が一致しない場合がある。グローバルに事業を展開する企業が冷媒漏えい量を集計する際は、拠点ごとに適用した GWP の版を記録しておかなければ、後年の第三者保証で説明できなくなる。

もう一つの論点は算定期間である。GWP は通常 100 年で評価されるが、HFC の大気中寿命は CO2 より大幅に短い。HFC-134a は約 14 年、HFC-32 は約 5 年とされる。寿命が短い物質は、短期間で評価すると影響が相対的に大きく現れるため、20 年 GWP は 100 年 GWP の 2〜3 倍程度の水準になる。HFC-134a の 20 年 GWP は AR4 で約 3,830 とされる。2030 年代の気温上昇の抑制という短期の視点では、HFC 削減の効果が 100 年 GWP で見るより大きく評価されることを意味する。キガリ改正の経済的な意義を説明するとき、この非対称性を押さえておくと議論が通りやすい。

また、業務用空調で広く使われる冷媒は単一成分ではなく混合物であり、GWP は成分の質量比による加重平均で求める。R-410A は HFC-32 と HFC-125 をほぼ 50:50 で混合したもので、AR4 の値(それぞれ 675 と 3,500)から計算すると約 2,090 となる。GWP の高い成分が一つ含まれるだけで混合冷媒全体の値が押し上げられる構造である。

冷媒 主な用途 100 年 GWP(AR4 ベースの一般的な値) 性質
HFC-134a(R-134a) カーエアコン、冷蔵ショーケース 1,430 単一成分・不燃
R-410A 業務用・家庭用空調 約 2,090 HFC 混合・不燃
R-404A 冷凍冷蔵(低温) 約 3,920 HFC 混合・不燃
HFC-32(R-32) ルームエアコン、業務用空調 675 単一成分・微燃性
HFO-1234yf カーエアコン 1 未満とされる 微燃性・分解生成物に論点
R-744(CO2) 給湯、冷凍冷蔵 1 高圧運転が必要
R-717(アンモニア) 大型冷凍設備 0 毒性あり・隔離が必要
R-290(プロパン) 小型冷凍機 3 程度とされる 強燃性・充填量に制約

日本の事業者に課されている管理義務の実務

日本では、キガリ改正の国内担保に先行して「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(フロン排出抑制法)が整備されており、業務用の冷凍空調機器を使う事業者は機器の「管理者」として直接の義務を負う。賃貸物件であっても、機器の所有者または保守管理の責任を持つ者が管理者となるため、テナント企業が自社に義務がないと誤解しているケースは少なくない。

管理者の義務の中心は点検と記録である。すべての第一種特定製品について、おおむね 3 か月に 1 回以上の簡易点検が求められる。加えて、圧縮機の定格出力が一定規模を超える機器には有資格者による定期点検が課され、冷凍冷蔵機器では 7.5kW 以上で年 1 回以上、空調機器では 7.5kW 以上 50kW 未満で 3 年に 1 回以上、50kW 以上で年 1 回以上という枠組みが運用されている。点検と充填・回収の履歴は機器ごとに記録し、機器を廃棄するまで保存する必要がある。

さらに、算定漏えい量が年間 1,000t-CO2 以上となった事業者は、国への報告義務が生じる。R-410A なら、漏えい量に換算して年間およそ 480kg が目安となる水準である。多数の店舗や冷蔵設備を持つ小売業・食品業では、1 拠点あたりの漏えいが小さくても合算すると報告水準に達することがあるため、拠点横断の集計体制が必要になる。

2020 年の改正では、機器を廃棄する際の冷媒引渡しについて規制が強化され、違反に対する直接罰が導入された。建物の解体時には、解体業者が特定製品の有無を確認し、書面で発注者に説明することが求められる。設備の更新やオフィスの移転、工場の閉鎖といった局面で、冷媒の扱いが法務リスクとして現れる構造になっている。社内の設備管理部門と、解体・移転を担当する部門の情報連携が実務上の弱点になりやすい。

冷媒漏えいはスコープ1 — 開示の数値に直接効く

GHG プロトコルでは、自社が所有・管理する機器からの冷媒漏えいは燃料燃焼と同じスコープ1(直接排出)に分類される。電力使用に伴う排出がスコープ2、調達に伴う排出がスコープ3 であるのに対し、冷媒は削減の責任が自社に明確に帰属する領域である。

算定の実務では、漏えい量を実測できないことが多い。GHG プロトコルは、機器への充填量と回収量の差から求める「物質収支法」、機器の種類ごとの漏えい率を用いる「スクリーニング法」などを示している。物質収支法は、点検・充填の記録が整備されていればフロン排出抑制法の管理データをそのまま使えるため、国内では制度対応と算定を一体で運用しやすい。

ここで経営上の意味が出てくる。省エネ投資によるスコープ1・2 の削減余地が限られてきた企業にとって、冷媒漏えいは残存する削減余地として比較的大きい場合がある。GWP 2,000 前後の冷媒を使う設備が多数ある事業所では、漏えい率を数ポイント下げるだけで数百 t-CO2 規模の削減になる試算も成り立つ。CDP の質問書や SBTi の目標設定で、スコープ1 の内訳として冷媒を区分して示す企業も増えている。設備の信頼性向上という保全部門の日常業務が、そのまま開示上の削減実績になるという点は、社内で削減策の優先順位を議論する際の説得材料になる。

逆に、算定していなかった冷媒漏えいを後から計上すると、基準年排出量の修正(リステートメント)が必要になり、過去に公表した削減率が変わる。早い段階で漏れのない算定範囲を確定しておくことが、開示の一貫性を保つうえで合理的である。

代替冷媒への転換に伴うトレードオフと設備投資の判断

低 GWP 冷媒への転換は、GWP を下げれば済むという単純な話ではない。GWP の低い冷媒は、おおむね燃焼性・毒性・運転圧力のいずれかで制約を持つ。HFC-32 や HFO 系の多くは微燃性(ISO の分類で A2L)に区分され、設置場所の換気や充填量の上限、冷媒検知の設計が必要になる。アンモニアは毒性のため機械室の隔離が前提となり、CO2 は高圧運転のため機器構成と保守体制が変わる。建築基準や消防関連の規定、機器の安全基準との整合を取る作業が実際の制約になることが多い。

加えて、HFO 系冷媒については、大気中での分解生成物であるトリフルオロ酢酸(TFA)の環境中での蓄積が論点となっており、欧州で検討されている PFAS 規制の対象範囲に含まれるかどうかが議論されているとされる。GWP だけを指標に転換を進めると、別の規制で再度の切り替えを求められる可能性が残る。

運用時のエネルギー消費も忘れてはならない。冷媒の漏えいによる直接排出と、機器の消費電力による間接排出を合算して評価する考え方は TEWI(等価総温暖化影響)や LCCP(ライフサイクル気候性能)と呼ばれる。多くの冷凍空調設備では、ライフサイクル全体の温暖化影響のうち消費電力に由来する部分が支配的になる。GWP が低くても効率の劣る機器を選べば、総量では悪化しうる。

投資判断の順序としては、次のように整理できる。

検討段階 判断の内容 見落としやすい点
現状把握 機器ごとの冷媒種・充填量・設置年・漏えい履歴の台帳化 賃貸物件やリース機器の管理責任の所在
影響量の算定 漏えい量の CO2 換算と消費電力由来排出の合算 GWP の版の統一、報告義務水準との距離
更新時期の決定 機器の残存耐用年数と規制スケジュールの重ね合わせ 冷媒の供給量削減に伴う補充用冷媒の価格・入手性
冷媒の選定 安全性区分・設置条件・効率・将来の規制動向 微燃性冷媒に伴う設置制約、PFAS 関連の議論
更新の実行 既存冷媒の回収・破壊の証跡確保 解体・移転時の引渡し義務と書面保存

キガリ改正に基づく生産・消費量の段階的削減は、使用中の機器の運転を禁じるものではないが、補充用の冷媒の供給量が市場全体で縮小していくことを意味する。既存機器を使い続ける前提に立つと、将来の補充コストと入手困難のリスクを抱え込む。EU では供給枠の縮小に伴って一部の冷媒価格が大きく変動した局面があったとされ、日本でも同種の圧力が生じうる。設備の更新計画を規制のスケジュールと重ねて前倒しに検討することが、コスト管理の面でも実務的な対応になる。

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