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Well-to-Gate(ウェルツーゲート)とは?採掘から工場出口までのGHG排出量算定とWell-to-Wheelとの違い

“Well-to-gate”(ウェル・トゥ・ゲート)とは、製品のライフサイクルの特定の段階を評価するための概念であり、特にエネルギーや環境影響の評価に使用されます。具体的には、原材料の採取(井戸)から製品が工場のゲートを出るまでのプロセスを指します。

Well-to-gateの詳細な説明

原材料の採取(Well)

    • この段階では、原材料(例:原油、天然ガス、鉱物など)の採取や抽出が行われます。
    • 採取プロセスには、採掘、掘削、収集などが含まれます。

    原材料の処理・輸送

      • 採取された原材料は、加工・精製のための施設に輸送されます。
      • この段階には、輸送のエネルギー消費や関連する排出も含まれます。

      製造プロセス

        • 原材料は、工場で加工され、製品に変換されます。
        • 製造プロセスには、化学反応、機械加工、組み立てなどが含まれます。
        • この段階でのエネルギー消費や排出も評価の対象となります。

        工場のゲート(Gate)

          • 製品が工場から出荷されるまでの段階を指します。
          • この時点でのエネルギー消費や環境影響が評価されます。

          Well-to-gate評価の目的

          • エネルギー効率の評価:製品が工場を出るまでに消費されるエネルギー量を評価し、効率向上のための改善点を見つける。
          • 環境影響の評価:製品の製造に関連する温室効果ガス排出量やその他の環境影響を評価する。
          • サプライチェーンの最適化:原材料の調達から製造までのプロセス全体を評価し、コストや環境負荷を最小限に抑えるための戦略を策定する。

          well-to-gateは、ライフサイクルアセスメント(LCA)の一部として使用されることが多く、製品の環境影響を総合的に評価するための重要な手法です。

          CO2排出量の算出にwell-to-gateが必要な理由

          CO2排出量の算出において、well-to-gateの評価が必要な理由は、製品やプロセスの環境影響を総合的かつ正確に評価するためです。

          まず、well-to-gateの評価は、製品のライフサイクルの初期段階で発生するCO2排出量を明確にするために重要です。これには、原材料の採取から製造工程の完了までのすべてのプロセスが含まれます。例えば、原油の採掘や天然ガスの抽出には多くのエネルギーが消費され、その過程で大量のCO2が排出されます。この初期段階の排出量を無視すると、製品全体の環境影響を過小評価することになります。

          次に、well-to-gateの評価は、原材料の輸送に関連するCO2排出量も考慮します。採取された原材料は、通常、製造施設まで長距離を輸送される必要があります。この輸送過程でもエネルギーが消費され、CO2が排出されます。この段階での排出量を把握することで、輸送手段やルートの最適化など、環境負荷を減らすための対策を講じることができます。

          さらに、製造プロセス自体も大きなCO2排出源です。原材料を製品に加工する際には、化学反応、機械加工、組み立てなどが行われ、これらのプロセスで大量のエネルギーが消費されます。各製造段階のエネルギー使用量とCO2排出量を詳細に評価することで、製造プロセスの効率化やエネルギー使用の削減を図ることができます。

          最後に、well-to-gateの評価は、サプライチェーン全体の最適化を促進します。原材料の採取から製品の出荷までのすべての段階でのCO2排出量を評価することで、企業は環境負荷を最小限に抑えるための戦略を立案できます。例えば、低炭素の原材料を選択したり、エネルギー効率の高い製造プロセスを導入したりすることで、全体のCO2排出量を削減することが可能です。

          このように、CO2排出量の算出にwell-to-gateの評価を含めることは、製品やプロセスの環境影響を正確に評価し、効果的な環境対策を講じるために不可欠です。


          Well-to-Gate・Well-to-Wheel・Well-to-Wake — システム境界の比較

          LCA(ライフサイクルアセスメント)では「どこからどこまでを評価するか」(システム境界)の定義が排出量計算の結果を大きく左右する。Well-to-Gateは採掘から工場出口、Well-to-Wheelは燃料の消費(走行)まで、Well-to-Wakeは航空燃料の燃焼まで含む。

          名称 開始点 終了点 主な用途 代表的な規制・基準
          Well-to-Gate(WtG) 原材料採掘(Well) 工場出口(Gate) 製品のPCF(製品カーボンフットプリント)算定、Scope 3カテゴリ1・4 ISO 14067、GHGプロトコル、EU RED III(SAF原料評価)
          Well-to-Wheel(WtW) 原材料採掘(Well) 車輪での駆動(Wheel) 自動車・輸送機器の燃料ライフサイクル排出量比較 EU VECTO、JRC Well-to-Wheels Report、CARB LCFS
          Well-to-Wake(WtWa) 原材料採掘(Well) 航空エンジン排気(Wake) SAF(持続可能な航空燃料)の炭素強度評価 ICAO CORSIA、EU ReFuelEU Aviation、ASTM D7566
          Cradle-to-Gate(CtG) 原料採掘(Cradle) 工場出口(Gate) Well-to-Gateとほぼ同義。製品が天然資源由来でない場合(再生材料等)に使い分け ISO 14044、EPD(環境製品宣言)
          Cradle-to-Grave(CtGr) 原料採掘(Cradle) 廃棄・リサイクル(Grave) 製品全体の完全なライフサイクル評価 ISO 14040/14044、EU エコデザイン規制
          Gate-to-Gate(GtG) 工場受け取り(Gate) 工場出口(Gate) 製造工程のみの評価。原材料の上流排出を除外 GHGプロトコル Scope 1・2集計時に参照

          GHGプロトコル・ISO規格とWell-to-Gateの対応関係

          企業がScope 3排出量(バリューチェーン排出量)を算定する際、Well-to-Gateの評価はカテゴリ1「購入した製品・サービス」やカテゴリ4「上流輸送・配送」に直接対応する。

          フレームワーク Well-to-Gateとの対応 具体的な算定事項
          GHGプロトコル Scope 3
          カテゴリ1(購入製品)
          原材料・部品の採掘〜工場出口(サプライヤーの工場出口)までの排出量 鉄鋼・アルミ・化学品・半導体等の購入時の上流排出量を供給者のWtGデータ(PCF)で算定
          GHGプロトコル Scope 3
          カテゴリ4(上流輸送)
          サプライヤー工場〜自社工場への輸送段階 燃料のWell-to-Tank排出係数(輸送車両の燃料製造段階の排出)を含む
          ISO 14067(PCF規格) 製品カーボンフットプリント算定の標準手法としてWtGを規定 機能単位あたりのCO₂e排出量をWtGで計算し、EPD(環境製品宣言)に記載
          ISO 14040/14044(LCA規格) LCAシステム境界の定義根拠 インベントリ分析(LCI)・影響評価(LCIA)の両フェーズでWtG境界を設定
          SBTi(科学的根拠に基づく目標) Scope 3削減目標の算定基礎 カテゴリ1のWtGデータ精度が目標達成の鍵

          産業別Well-to-Gate排出量の実例

          Well-to-Gateの具体的な排出量は産業・製品・製造方法によって大きく異なる。以下は主要製品のWell-to-Gate排出量の参考値(出典:JRC、IEA、IPCC各報告書・業界団体データ)。

          製品・燃料 WtG排出量(gCO₂e/MJ または kgCO₂e/kg) 主要な排出源 削減の主な手段
          従来ジェット燃料(化石由来) 約15〜20 gCO₂e/MJ(Well-to-Tank相当) 原油採掘・精製・輸送 精製プロセスの電化・CCS
          廃食油由来SAF(HEFA) 約5〜20 gCO₂e/MJ 廃油収集・精製(天然ガス使用) 再エネ熱利用・水素精製
          粗鋼(高炉BF-BOF方式) 約1.85 tCO₂e/t-鋼(WtG) コークス製造・高炉内燃焼 高炉水素還元・DRI-EAF転換
          粗鋼(電炉EAF・スクラップ) 約0.4〜0.7 tCO₂e/t-鋼(電力排出係数依存) 電力消費(電源構成に依存) 再エネ電力調達
          アルミニウム(原生アルミ) 約12〜16 tCO₂e/t-Al ボーキサイト採掘・電解精錬の大量電力 再エネ電力・廃熱回収
          セメント(普通ポルトランドセメント) 約0.8〜0.9 tCO₂e/t-セメント 石灰石の焼成(プロセス排出が主) CO₂回収(CCS)・低炭素クリンカー
          リチウムイオン電池(LFP/NMC) 約50〜80 kgCO₂e/kWh(電池容量当たり) 鉱物採掘・精製・セル製造の電力 再エネ電力・廃電池リサイクル

          Well-to-Gateデータの入手先と算定実務

          企業がScope 3算定や製品PCFを算定する際、Well-to-Gateの排出量データは以下から入手できる。

          • ecoinvent データベース:世界最大のLCAデータベース。製品・素材・エネルギーのWtGインベントリデータを収録。ライセンス制。
          • GHGプロトコル サプライヤーエンゲージメントガイド:1次データ(サプライヤー実測値)と2次データ(業界平均)の使い分けを規定。
          • 環境省 産業連関表ベースCO₂排出原単位:日本産業の業種別WtG排出原単位(無償公開)。
          • EPD(Environmental Product Declaration)データベース:EU・北米・日本の製品ごとのPCF情報が公開登録されている(IBU、EPD International、SuMPP等)。
          • PACT(Partnership for Carbon Transparency)Pathfinder:製品レベルのPCFデータ共有の業界標準。カテゴリ1 Scope 3算定に対応。

          よくある質問(FAQ)

          Q1. Well-to-GateとWell-to-Tankの違いは?
          Well-to-Tank(WtT)は燃料限定の用語で「採掘〜燃料タンク充填まで」を指す。自動車・航空用途でWell-to-Wheelの前半部分に使う。Well-to-Gateはより広い製品(素材・機器・化学品)にも適用可能な汎用概念。
          Q2. CARBやEU RED IIIでの「CI値(炭素強度)」はWell-to-Gateと同じ?
          燃料のCI値はWell-to-Gate(または Well-to-Tank)相当の数値。LCFS(カリフォルニア)ではCI値の算定にCA-GREETモデルを使い、原料採掘〜燃料精製・輸送段階の排出を含む。EU RED IIIでは「上流排出量(Eec)」として明示的に区分する。
          Q3. Scope 1・2とWell-to-Gateの関係は?
          自社の製造工程で発生する排出(Scope 1)と購入電力由来(Scope 2)の一部がWtGに含まれるが、WtGは「製品視点」の概念。自社Scope 1・2+上流サプライヤーのScope 1・2を合算した値がWtGに相当する。
          Q4. CBAM(炭素国境調整メカニズム)ではWell-to-Gateが使われる?
          CBAMはScope 1・2に相当する「直接排出量」と一部の間接排出量を対象とし、WtGの全範囲をカバーするわけではない。ただし鉄鋼・アルミ・セメント等では製造工程のWtGデータが申告書類の基礎となる。

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