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再エネ変動を吸収する仕組み2026 — 次世代地熱・熱電池・VPPの採算と日本の制約

(本稿の情報は2026年10月時点)

この記事の結論

  • 変動吸収の主役は蓄電池から離れ、出力一定のクリーン電源と熱としての長時間貯蔵に移った。次世代地熱は2026年9月30日に商用運転へ入っている。
  • VPP・デマンドレスポンスのソフトウェアはプラットフォームや機器メーカーへの吸収が主流で、単独で残れるのは自社資産か巨大な単一需要家を押さえた企業だけだ。
  • 日本の制約は技術ではなく収益設計だ。調整力の上限価格引き下げで、系統用蓄電池の採算は容量契約と卸市場の裁定に寄る。

再生可能エネルギーの変動を吸収する手段は、この3年で順位が入れ替わった。2023年に有望視された家庭用VPPと亜鉛系フロー電池の中核企業は市場から消え、かわりに出力一定のクリーン電源と、電気を熱に変えて貯める設備が商用運転に届いた。判断の軸は「どの電池が安いか」から「何時間、どの形で返せるか」へ動いている。

日本の数字がその理由を示している。2025年度の再エネ出力制御率として年度内に示された見通しは、九州で6.1%程度、東北・北陸・中国・四国で1〜3%、北海道・中部・関西で0〜0.4%だった。九州ではオンラインで制御できる設備を増やしたことで、制御量が約3割減っている。捨てる電気を減らす勝負は、発電側ではなく吸収側の設計で決まる。

出力一定のクリーン電源が先に実需へ届いた

次世代地熱のFervo Energyは2026年9月24日にユタ州Cape Stationを系統へ同期させ、9月30日に商用運転を宣言した。第I期は33MWのユニット3基で約100MW、建設と試運転の完了までが23か月である。残る2基は2027年1月1日までの商用運転開始を予定し、第II期の400MWはすでに建設中で2028年の運転開始を見込む。2023年時点のこの会社は、商用パイロットの性能実証を終えたばかりの開発企業に過ぎなかった。

資金の流れが技術の確度を物語っている。2025年12月にシリーズEで4億6,200万ドル、2026年3月に第I期向け4億2,100万ドルのノンリコース・プロジェクトファイナンス、2026年5月にナスダック上場(FRVO)と続いた。2026年9月1日にはGoogleと396MWの電力購入契約を締結している。掘削ではSawtooth 7号井が測定深度19,448フィート・水平部7,500フィートを21日で到達し、Cape Stationの初号井から掘進率で143%改善した。

なぜ儲かるかは明快だ。24時間動く無炭素電源は、データセンターのように止められない需要と直結し、変動電源の裏側を埋める価値を価格に乗せられる。地熱の経済性は資源の当たり外れではなく、掘削の学習曲線で決まる。供給側に「出力が動かない選択肢」が戻ったことは、吸収設備の必要量そのものを減らす。

洋上風力は価格競争の請求書を受け取った

三菱商事と共同事業者は2025年8月27日、洋上風力第1ラウンドで落札した3海域からの撤退を正式に表明した。対象は秋田県能代市・三種町・男鹿市沖の478.8MW(供給価格13.26円/kWh)、秋田県由利本荘市沖の819.0MW(11.99円/kWh)、千葉県銚子市沖の390.6MW(16.49円/kWh)で、合計1,688.4MWにのぼる。2021年12月に3海域を総取りした案件が、風車メーカー3社の値上げを含む事業環境の変化によって、成立する計画として描けなくなった。

制度側の反応は速かった。公募の評価は迅速性の配点を20点から10点へ下げ、事業実現性を20点から25点、供給網形成を25点へ上げる方向に組み替えられた。工期には価格交渉のための2年のバッファを認め、1社が1ラウンドで落札できる容量に1GWの上限を置く。2026年6月5日の運用指針改訂では「想定供給価格幅」が導入され、供給価格がこの幅以下なら価格評価点は一律120点になる。安さを競わせる仕組みが、事業を完遂させる仕組みに置き換わった。

読める教訓は一つだ。入札価格は、その出力を吸収する費用を織り込んでいなかった。洋上風力を安く建てても、変動を吸収する蓄電や需要移動の費用は別の誰かが負う。価格点を下げた今回の見直しは、その付け替えを制度として認めたことになる。

海洋エネルギーは実証の段階にとどまる

九電みらいエナジーは商用スケールの潮流発電機1,100kWを長崎県五島市の奈留瀬戸(水深約40m)の海底に設置し、2025年5月に実証運転を開始した。環境省の委託事業として、地域の系統に接続して実際に送電する段階にある。国内初の商用規模という位置づけが示すとおり、潮流は複数基の商用プラントを運転している技術ではない。波力に関しては、系統へ接続して運転を続ける商用規模の事例を確認できなかった。2030年までの投資判断では、海洋エネルギーは収益源ではなく技術オプションとして扱うのが現実的だ。

貯蔵と供給、選択肢を定量で並べる

技術 代表企業 連続して返せる時間 商用化の段階(2026年10月) 確認できる規模・資金
次世代地熱(EGS) Fervo Energy(米) 連続運転 商用運転(2026年9月30日) 第I期約100MW、第II期400MW建設中、Google向け396MW PPA
熱電池(炭素ブロック、熱と電力) Antora Energy(米) 100時間(5GWh÷50MW) 商用稼働(2026年5月) Project Big Stone 50MW/5GWh、シリーズC 5億5,000万ドル
熱電池(産業用蒸気) Rondo Energy(米) 日単位 商用建設中 Covestro向け100MWh(2026年末稼働予定)、累計調達約1億5,700万ドル
バナジウムフロー電池の電解液 LEシステム(日本) 4〜10時間 量産・輸出 浪江工場 年産5,000m³、スペイン向け507タンク(約8.5MWh相当・約3億3,000万円)
亜鉛臭素フロー電池 Redflow(豪) 中時間 清算により消滅(2024年12月) 買い手が付かず知的財産ごと売却手続き
中古EV電池の二次利用 B2U Storage(米) 2〜4時間 商用運転 累計100MWh、電池5,000個超、1筐体2.5MWh

有利さは用途で分かれる。産業の熱需要を抱える企業にとって最も確実な選択は熱電池だ。AntoraがPOETのバイオ燃料工場に据えた設備は50MWの供給を100時間続けられる構成で、着工から供給開始までが12か月を切った。リチウムイオンで同じ時間を埋めれば桁が違う投資になる。電力として戻すなら、地熱のように燃料なしで連続運転する電源のほうが安い。最大のリスクはRedflowの型である。製造の歩留まりを確保できないまま家庭用・中規模の市場を狙った会社は、技術が正しくても資本が尽きた時点で終わる。導入側の判断基準は、特許の内容ではなく、稼働中の設備数と製造拠点の実在だ。

日本の収益設計が採算を決める

収益の柱 従来の水準 2026年10月時点の水準 事業への影響
一次調整力・二次調整力①・複合商品の上限価格 19.51円/ΔkW・30分(2024年3月以降) 10円/ΔkW・30分(2026年9月1日受渡分から適用) 高速応答のプレミアムがほぼ消えた
蓄電池の複合商品 平均約定価格(2024年度) 15.70円/ΔkW・30分 上限10円が天井 実績の平均を下回る水準に圧縮
容量収入(長期脱炭素電源オークション第3回) — 脱炭素電源426.1万kW約定、うちリチウムイオン蓄電池・揚水(新設除く)81.9万kW 20年固定の容量契約が主柱に移る
系統連系(2025年12月末) 連系済み64万kW 契約申込み約3,000万kW 設備より接続枠の確保が律速

数字の並びは一つの結論を指している。調整力市場の高速応答で稼ぐ前提に立った案件は、採算が崩れる。2024年度に蓄電池が複合商品で得た平均約定価格15.70円に対し、2026年9月1日受渡分からの上限価格は10円である。19.51円だった上限は2026年度に入って段階的に引き下げられ、すでに実施済みの引き下げだけで天井が実績の平均を下回った。さらに二次調整力②・三次調整力①と同じ7.21円まで統一する案が、競争状況が改善しない場合の次の段階として残っている。天井が下がれば、劣化費用を回収する前提が変わる。かわりに主柱になるのは、長期脱炭素電源オークションの20年固定の容量収入と、卸市場の時間差を取る裁定である。連系済み64万kWに対して契約申込みが約3,000万kWという比率は、設備が余り、枠と収益契約が足りない状態を意味する。先に枠と容量契約を取った事業者だけが勝つ構図だ。

EMS・VPPのソフトウェアは三つの出口に分かれた

Swell Energyは2024年に閉鎖した。SoftBankやAres Managementなどから1億5,000万ドル超を調達し、ハワイで約1,200世帯のVPPを運営していたが、全従業員を解雇し、連邦破産法第11章ではなく債権者のための資産譲渡という手続きで資産を整理した。サクラメント市営電力は共同で始めたVPPプログラムを一時停止している。家庭用蓄電池を集めて市場収益を得るモデルは、設備の資本費と制度収入の板挟みで自力では回らなかった。

買収による出口のほうが多い。AutoGridは2022年にシュナイダーエレクトリックの傘下に入り、2024年2月9日に同社からUplightへ移った。シュナイダーは取引にあわせて4,000万ドルを追加出資している。Heila Technologiesは2022年1月4日にKohlerが買収し、分散型エネルギー資源とマイクログリッドの最適化は発電機メーカーの製品機能に組み込まれた。Bidgelyは2025年3月にGrid4Cを買収し、契約世帯1,500万超の規模でユーティリティ向けAIに軸足を移している。日本では東京電力エナジーパートナーの顧客向けに、家電別の電力使用量レポートを提供してきた。家庭向けの単体EMSは、製品ではなくプラットフォームの一機能になった。

三つ目の出口は、単独の事業として残る道だ。UtilidataはNVIDIAのJetson Orin Nanoをベースにしたモジュール「Karman」を開発し、2025年4月に6,000万ドル、2026年5月に追加4,000万ドルを調達した。応答は20ミリ秒未満、計測は毎秒100万回で、スマートメーターへの組み込みと並行してデータセンター内の電力再配分を狙う。Lunar Energyは2026年2月に2億3,200万ドルを調達し、VPPソフトのGridshareで650MWの分散リソースを単独で運用している。この道が閉じたわけではないが、条件は重い。自社で資産とハードウェアを押さえるか、データセンターのような巨大な単一需要家を抱えるか、どちらかの体力を備えた会社だけが独立して残っている。

課題と限界、そして代替視点

熱電池の評価には留保が付く。Antoraの5GWhは発電所ではなく工場の熱源で、電気として系統に返す用途ではない。産業用蒸気を電化できる設備を持つ企業にしか価値が届かず、電力価格が燃料価格を上回る市場では投資回収が成立しない。Rondoの案件が欧州の化学・食品に集まっているのは、産業用電力の価格と制度支援の組み合わせが成立する地域が限られていることの裏返しだ。

次世代地熱の成功を一般化するのも早い。Fervoの実績は米国西部の地質、シェール由来の掘削サービス産業、そして税制優遇の上に成り立っている。掘進率143%改善という数字は、掘削リグとサービス会社の層が厚い市場でしか再現できない。日本の地熱は温泉法と自然公園法の制約、地元との調整、そして系統の受け入れ余力という別の壁に当たる。

リチウムイオンの価格低下が長時間貯蔵の出番を遅らせるという反論も成り立つ。4時間級の設備が十分に安ければ、100時間級の技術は市場を待たされる。中古EV電池にも限界がある。B2Uは累計100MWhまで来たが、良質な中古パックの供給量と自動車メーカーの回収方針が事業規模を決め、技術ではなく調達が天井になる。

代替視点として最も安い吸収策を挙げるなら、設備ではなく需要の移動だ。九州でオンライン制御の設備を増やした結果、出力制御量が約3割減ったという事実は、数千億円規模の投資をせずに変動を吸収できる余地が残っていることを示している。制御可能な需要とヒートポンプ、給湯、EV充電の時間移動は、どの蓄電池よりも安い。

日本市場・日本企業への示唆

海外のVPP事例をそのまま持ち込めない最大の理由は、収益の出口が制度で決まっていることだ。米国では容量市場とデマンドレスポンスのプログラムが州ごとに違う価格で分散リソースを買う。日本では需給調整市場の上限価格、容量市場、長期脱炭素電源オークションという限られた窓口に収益が集中し、その窓口の価格は政策で動く。一次調整力の上限が19.51円から10円へ実際に下がり、さらに7.21円への統一が次の段階として控えている局面では、高速応答を売る事業計画はすでに書き直しが必要になっている。制度の価格設計を読む力が、技術選定より先に来る。

系統接続の順番も海外と異なる制約だ。2025年12月末時点で連系済み64万kWに対し、契約申込みは約3,000万kWにのぼる。土地と枠を先に押さえた事業者が有利な構造で、ソフトウェアだけを持ち込む海外企業は日本の事業会社と組まない限り入れない。GridBeyondが2024年4月に横河電機と資本提携し、同年12月に兼松とデマンドレスポンスの業務提携を結び、2025年8月に東京に拠点を構え、2025年6月に系統用蓄電池のトレーディングを始めた順序は、この制約への合理的な対応だ。2026年3月にはサムスンベンチャーズから約1,200万ユーロを調達している。

日本企業の入り方は、すでに三つの型が見える。丸紅はB2U Storageへの出資で中古EV電池の二次利用に関与し、米国の系統で運転データを積んでいる。LEシステムは浪江工場のバナジウム電解液を2025年1月にスペインの大型蓄電所へ輸出し、系統用の長時間貯蔵を部材で取る道を示した。東京電力エナジーパートナーはBidgelyの分析を顧客サービスに載せ、需要側のデータを自社の資産にしている。発電事業そのものより、部材・データ・二次利用という周辺で収益を取る構えのほうが、制度変更に強い。

示唆として整理すると、投資の優先順位は、産業熱の電化と熱貯蔵、次に接続枠を伴う系統用蓄電池、最後に海洋エネルギーになる。洋上風力は制度が完遂重視へ転換した局面で、価格より工程とサプライチェーンの説明力が落札を決める。

熱で貯める選択肢は媒体ごとに別の市場を持つ

熱電池を一つのカテゴリーとして扱うと判断を誤る。蓄える媒体が温度帯を決め、温度帯が売れる相手を決めるためだ。産業用蒸気の高温帯と、建物の冷房・給湯の低温帯では、競合する燃料も価格も別物である。

媒体 代表企業 拠点 狙う需要
氷(アイスフォビック熱交換器 IHEX) Shift Thermal 米国 冷却のピークシフト、短時間・長時間の両用
溶融塩(540℃、高温ヒートポンプ/ヒートエンジン) Airthium フランス 100kW〜GW規模の電力貯蔵、往復効率70%
溶融塩(高温熱) HYME デンマーク 断続的な再エネの大規模貯蔵
塩と水の熱化学反応 Cellcius オランダ 長期保存とロスのない熱の輸送
新規開発の蓄熱材 MGA Thermal オーストラリア 系統安定化、建物暖房、産業プロセス、廃熱
温水(家庭用ヒートポンプ連携) Harvest Thermal 米国(カリフォルニア州) 家庭の暖房・給湯・冷房の統合制御
液化CO₂ Energy Dome イタリア 低コストの長時間電力貯蔵
廃熱からの発電(熱発電システム) Echogen Power Systems 米国 失われる熱の収益化

Airthiumの構成が示すのは、熱貯蔵を電力に戻す往復効率の天井である。溶融塩を540℃まで加熱して電気に戻す経路で70%に達するという設計値は、電力として返す用途でも熱貯蔵が選択肢に入る水準だ。同社はアンモニア生成ユニットと外部バーナーを足せば、数日の無日照・無風でも無停電電源やオフグリッド運転が成立するとしている。熱と燃料を兼ねる構えである。

低温側の経済性は別の論理で決まる。Harvest Thermalは温水タンクを熱電池として扱い、ヒートポンプを安くクリーンな時間帯に動かすことで、家庭の暖房・給湯の二酸化炭素を90%、月額料金を3分の1に削減するとしている。設備を増やすのではなく、既存のヒートポンプの運転時刻を動かす投資であり、日本の給湯需要にそのまま重なる領域だ。

長時間貯蔵の電池と部材は化学種で層が分かれる

フロー電池を一社の清算で見限るのも早い。化学種ごとに別の企業群が商用化の段階を上がっており、日本企業が電解液で参入しているのと同じ構造で、セル側・材料側に分業が成立している。

化学種・方式 代表企業 拠点 位置づけ
バナジウムフロー(セル・システム) Invinity 英国 長寿命を訴求、シリーズB
有機フロー(炭素ベース分子) CMBlu Energy ドイツ クエン酸回路を模した分子で大量貯蔵、助成金段階
エネルギーと電力容量を分離した長期貯蔵 Noon Energy 米国 断続電力をオンデマンド化、サウジアラムコが支援
数日級の貯蔵 Form Energy 米国 風力・太陽光の系統供給能力の拡大
亜鉛系(リチウムイオンの制約回避) Eos Energy Storage 米国 電力・太陽光・産業向けの低コスト貯蔵
亜鉛アルカリ(再充電可能) Urban Electric Power 米国 ニューヨーク州立大学エネルギー研究所からのスピンアウト

亜鉛系の系譜が、買い手の付かなかった一社の退出で途切れていないことは重要だ。EosとUrban Electric Powerはいずれも家庭用ではなく事業用・系統用を狙っており、歩留まりの壁を小型モジュールの量産で越えようとした戦略とは入り方が違う。導入側が見るべきは化学種の名前ではなく、どの顧客層にどの生産方式で出しているかである。

部材側の層も厚くなっている。Sila Nanotechnologiesは高エネルギー密度のリチウムイオン電池をアップルウォッチやメルセデス・ベンツのEVに供給し、Farad Powerは負極用のカーボン/Si、正極用のカーボン/S、リチウムイオンキャパシタ向け炭素材料を手がける。安全側ではSafire Technology Groupが、機械的衝撃を受けると瞬時に液体から固体へ変わる電解質添加剤で爆発・火災を防ぐ。充電制御ではIontraが既存の商用リチウムイオン電池に後付けできる制御ソリューションを提供する。セルを自製せずに電池市場へ関与する入口は、材料・添加剤・制御のいずれにも開いている。

EV充電とマイクログリッドが需要側の吸収装置になる

吸収側で最も安い手段が需要の時間移動であるなら、その実装先として最大の新規需要はEV充電である。SwiftChargeはクラウド型のマイクログリッド電力制御を組み込んだCharging as a Serviceで、ピーク時のデマンドを約6倍削減し、同じ受電設備で設置できる充電器の数を4倍に増やせるとしている。受電容量の増設や系統側の工事を伴わずに充電容量を増やせるという点が価値であり、接続枠が律速になっている日本の条件と相性がよい。

ev.energyは電気自動車向けのスマート充電プラットフォームで、充電時刻を動かして二酸化炭素排出とコストを下げる。ElectricFishは急速充電と系統へのバックアップ備蓄を兼ねる分散型エネルギー貯蔵をサービスとして売る。Elonroadは走行中給電の道路側インフラと駐車中のワイヤレス充電を開発している。家庭側ではModulyが小型蓄電池を核にしたVPPを組み、太陽光の余剰を価格ピークや停電時に家電とEVへ回す。

系統から離れた場所では、吸収ではなく自立が目的になる。BoxPowerは太陽光パネル・インバーター・蓄電池・バックアップ電源を一つのコンテナに収めたワンストップのマイクログリッドを農場や僻地に置く。Husk Power Systemsはサブサハラアフリカと南アジアの無電化・弱電力網地域で太陽光ハイブリッドマイクログリッドを自ら所有・建設・運用し、デット調達で設備を増やしている。マイクログリッド事業の資金はエクイティから負債へ移っており、発電資産としての評価が確立した領域である。

中古EV電池の側では、調達契約が事業規模の上限を決める構造が明確になっている。Moment Energyは使用済みEV電池を48kWhのブロックに組み、最大1MWhまで積み上げて商業・産業施設やEV充電ネットワークのピーク平準化に使う。メルセデス・ベンツと業務提携し、ENEOSが出資している。中古パックの供給元を押さえた企業だけが量を出せるという点で、丸紅が出資する事業者と同じ型だ。日本側の参入手段は技術開発ではなく、自動車メーカーとの回収契約に資本で入ることである。

計測と可視化の層が投資判断の前提になる

吸収設備を入れる前に、どこに余裕がなく、どこに動かせる需要があるかを測る層がある。この層は投資額が小さく、制度変更の影響も受けにくい。

系統側ではReactive Technologiesが、系統慣性などの状態を高精度で測る技術を開発している。計測があれば、送電容量を安全側に過大評価して使い残す余地が減り、クリーン電源の受け入れ余力そのものが増える。BGF、Breakthrough Energy Ventures、Eaton、Accenture Venturesが出資し、2022年のBloomberg New Energy Finance Pioneers賞を受けている。建設の前段ではCivilGridが、ユーティリティ・環境・地盤のデータを重ねた建設インテリジェンスのプラットフォームを提供する。接続枠と並んで用地のリスクが律速になる事業では、着工前の情報が工程表の確度を決める。Sync Energy AIは衛星データから電線に覆いかぶさる樹木を事前に検知し、電力会社の保守を効率化するソフトウェアを売る。

建物側ではadvanced climate systemsのSmartbaseが、改修や大規模投資なしに既設の設備へ接続し、リアルタイムのデジタルツインを10秒ごとに更新して制御する。機械学習による新しい制御で20%の省エネを保証し、既存設備の設定見直しで15〜40%の即時削減を示すとしている。さらに電力料金に合わせて消費をピーク直後へずらすか、建物内のバッファを使う。蓄電池を入れずに需要を動かす実装例である。家庭側では英国のGeo(Green Energy Options)が、室内表示器とスマートヒーター制御を組み合わせたTrio+ Heatingで、複数箇所の暖房制御・気候予測・スケジュール・効率モードにより最大12.5%の節約を示し、スマートメーターのデータから個別の助言まで降ろしている。AlertMeのHiveは暖房・給湯・EV充電を一つのアプリで管理し、電力料金と連動させて最も安い時刻に充電する。

この層の示唆は単純だ。計測と制御のソフトウェアは、単体で高い収益を生む製品ではないが、吸収設備の必要量を減らし、投資判断の前提を作る。設備投資の前に測る順序を守るかどうかが、過大な蓄電池を抱えるかどうかを分ける。

まとめ

2023年から2026年の間に起きたのは、技術の勝ち負けではなく、資本の規律が働いたことだった。家庭用VPPで市場収益を狙ったSwell Energyは閉鎖し、亜鉛臭素フロー電池のRedflowは買い手すら見つからず清算された。生き残ったのは、Fervoのように20年の電力購入契約と非遡及型の負債で資金を固めた会社と、Antoraのように単一の大口顧客の構内で設備を動かした会社である。分散リソースを束ねるソフトウェアは、AutoGridとHeilaのようにプラットフォームや機器メーカーの一部へ吸収される例が目立つ一方、Lunar Energyのように2億3,200万ドルを調達して650MWを自ら運用し続ける独立企業も残った。単独で成立するかどうかを分けたのは、ソフトウェアの優劣ではなく、資産と資金を自前で確保できたかどうかである。

日本の判断材料は、技術の優劣ではなく制度の価格だ。調整力の上限価格は2026年度に入って段階的に引き下げられ、2026年9月1日受渡分から一次調整力・二次調整力①・複合商品は10円になった。引き下げは案ではなく実施済みの条件であり、高速応答を主収益に置いた系統用蓄電池の案件は、すでに前提の組み替えを済ませていなければならない。かわりに20年固定の容量収入と卸市場の裁定が柱となり、接続枠と土地を先に確保した事業者が優位に立つ。洋上風力では、想定供給価格幅と1社1GWの上限が、安値入札で総取りする戦略を封じた。産業側では、電力価格と燃料価格の関係が成立する工場から順に熱電池の投資判断が動く。

2027年から2028年に向けては、Cape Stationの第II期400MWが予定どおり運転に入るかどうかと、引き下げ後の調整力価格のもとで系統用蓄電池の第一陣が投資回収の実績を示せるかどうかが分水嶺となる。前者が成功すれば、変動吸収は貯める側だけの課題ではなくなる。後者が失敗すれば、日本の蓄電池市場は接続申込みの山を抱えたまま、容量契約を取れた少数の案件だけが残る市場に収れんする。

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