(本稿の情報は2026年10月時点)
この記事の結論
- 液冷化で下がる冷却設備電力はDC事業者のScope 2に現れ、テナントのScope 2が動くのはサーバ内蔵ファン動力の削減分だけである。
- 「液冷で数割削減」の大半はサーバ世代交代による性能/W改善であり、ベースラインを固定して分解しない限り正味削減量は確定しない。
- 水使用はGHG上の相殺にならないが、CO2単独で正味削減を訴求すると水関連開示との整合性を問われることになる。
空冷から液冷への切り替えで、PUEは1.5前後から1.2前後へ下がる。だがその電力削減を自社の削減として計上できるかは、コロケーション契約か専用ラックかクラウドかで変わる。さらに水使用の増加とサーバ更新による削減の混在が、正味の数字を曖昧にする。どこまでが自社の削減かを分解する。
冷却方式の変更は「誰の削減」なのか
DC事業者から「液冷化によりPUEが1.52から1.20へ改善しました」という通知が届く。IT部門が最初に直面するのは、この0.32の改善が自社のGHGインベントリのどこに、どれだけ現れるのかという問いだ。答えは「どのScopeにも自動では現れない」である。PUEは比率であり、テナントの排出量計算式に直接入る変数ではない。テナントの数字が動くのは、事業者から受け取る配分後の電力量(kWh)または排出係数が更新されたときだけだ。
DC事業者側の問いは逆向きになる。自社のScope 2が下がったことを顧客向け資料で「お客様の削減に貢献」と書くと、事業者のScope 2削減と顧客のScope 3削減が同じ物理削減を二重に語る構図になる。GHGプロトコルの枠組みでは、Scope 2とScope 3の重複は設計上許容されている(バリューチェーン上の同一排出が各主体で異なるScopeに現れる)。だが「当社の削減量」と「顧客の削減量」を足し上げて外部に示すと、実質的な二重計上になる。この線引きを曖昧にしたまま営業資料を作ることが、後のアサーション検証で問題になる。
電力の調達方法(24時間カーボンフリー電力やコーポレートPPAの経済性)と、削減分の環境価値の価格化は、ここでは扱わない。焦点は冷却方式の変更によって生じた物理的な電力削減が、どの主体のどの区分に帰属し、どう測られるかに限定する。
PUEとWUEの定義が決める「測れる範囲」
ISO/IEC 30134-2がPUE、ISO/IEC 30134-9がWUEを規定する。実務上重要なのは、どちらも測定カテゴリ(測定点の粒度と頻度)を複数定義しており、同じ設備が異なる数字になりうる点だ。PUEカテゴリ1はUPS出力での集計、カテゴリ2はPDU出力、カテゴリ3はIT機器入力での測定を前提とする。測定点が機器に近づくほど分母のIT電力は小さくなり、PUEの値は大きくなる。事業者間でPUEを比較するとき、カテゴリが揃っていなければ比較は成立しない。
液冷特有の論点は、CDU(冷却分配ユニット)と二次ループのポンプ動力をIT側(分母)に入れるか施設側(分子)に入れるかである。ラック内蔵型CDUでIT機器のPDUから給電する構成では、ポンプ動力が分母に入り、PUEは見かけ上改善する。施設側の一次ループから給電すれば分子に入る。規格は測定境界を定めるが、液冷補機の分類は構成ごとの解釈に委ねられる領域が残り、同じ物理構成でも配線設計次第で無視できない幅が生じる。この幅は定義の問題であって、物理的な省エネとは無関係だ。
もう一つ見落とされやすいのが、サーバ内蔵ファンの削減である。空冷サーバではファン動力がIT電力の5〜10%程度を占めるが、直接液冷(D2C)でこれが大きく減ると分母が縮む。分子(冷却設備電力)が同率で下がらなければ、PUEは改善しないか悪化する。絶対的な総消費電力は下がっているのに、比率指標は悪化する。PUEは効率の管理指標であって、排出量の指標ではない。
| 測定カテゴリ | IT電力の測定点 | 集計頻度 | 液冷CDUの一般的な扱い | 同一設備での典型値(試算) |
|---|---|---|---|---|
| カテゴリ1 | UPS出力 | 月次以上 | 配線元で分子/分母が変動 | 1.15 |
| カテゴリ2 | PDU出力 | 日次 | ラック内給電なら分母 | 1.20 |
| カテゴリ3 | IT機器入力 | 15分以下 | 施設一次側なら分子 | 1.24 |
| 参考(空冷・カテゴリ2) | PDU出力 | 日次 | — | 1.52 |
出典:Climate tech news(CTJPN)試算(前提は本文)
前提:同一施設・同一年間IT負荷を想定し、測定点の下流に生じる給電ロス(UPS→PDU、PDU→IT機器入力)の分だけ分母が縮む構成とした。液冷はD2C+新設一次側を想定。
この表が示すのは、PUEの数値交渉には0.09程度(1.24−1.15)の「定義上の幅」があるという事実だ。参考値として、海外の大規模事業者は自社DC群の加重平均PUEを1.1前後として公表しているが(Google環境報告書など)、こうした公表値も測定境界と対象施設の選び方に依存する。テナント側が契約交渉やRFPでPUEを評価指標に入れるなら、測定カテゴリと液冷補機の帰属を文書で固定しない限り、数字は比較不能になる。有利なのは、PUEを指標から外して配分後の実測kWhを月次で受け取る契約だ。kWhは定義の揺れがなく、テナントの計算式に直接入る。
正味削減の分解 — 冷却・サーバ更新・負荷増を切り分ける
液冷導入はほぼ必ずサーバ更新と同時に行われる。GPUサーバの高密度化が液冷を要求するからだ。この同時性が、削減量の帰属を混乱させる最大の原因である。「液冷化で消費電力が数割下がる」と語られる数字の大半は、実際には世代交代による性能/W改善に由来している。
分解の順序は固定したほうがよい。まず更新前の年間総電力とワークロード量をベースラインとして固定する。次にIT電力の変化を、同一ワークロードに換算した性能/W改善分と、純粋なファン動力削減分に分ける。その後に施設電力(冷却・給電ロス)の変化を見る。最後に負荷増(ワークロード増加分)を補正項として別建てにする。この順序を守らないと、負荷増による総電力増加が「液冷の効果が出ていない」という誤った結論に化ける。
| 削減要因 | 典型的な寄与(試算) | 物理的な現れ方 | 帰属先(テナント視点) |
|---|---|---|---|
| サーバ世代交代(性能/W) | IT電力 −25〜35% | 分母縮小 | Scope 3(購入サービス量の減少) |
| サーバ内蔵ファン削減 | IT電力 −4〜8% | 分母縮小 | Scope 3 |
| 冷却設備電力の削減 | 施設電力 −40〜60% | 分子縮小 | DC事業者のScope 2、テナントはScope 3 |
| 高密度化による負荷増 | 総電力 +10〜40% | 絶対量増加 | テナントのScope 3(増加) |
出典:Climate tech news(CTJPN)試算(前提は本文)
前提:世代交代は同一ワークロード換算での1〜2世代更新、冷却設備電力の削減は新設・高温水冷却を前提とした値であり、一次側を改修できない案件では大幅に小さくなる。ファン削減はラック内気流確保分が残存するため本文の占有率(5〜10%)より下限が低い。負荷増は同一更新案件内での増分で、増床は含まない。
表の数字を素直に読めば、冷却方式の変更そのものが生む削減は施設電力側に集中しており、総電力に対する寄与は世代交代より小さい。それでも液冷への投資判断が成立するのは、冷却が高密度ラックの物理的な前提条件であり、液冷なしには世代交代自体ができないからだ。経済的な価値は「削減量」ではなく「設置可能密度」にある。
ジェボンズ効果に近い構図も見ておきたい。需要を生んでいるのはGPUそのものだが、冷却効率の改善がラック当たり100kW超の実装制約を外し、同じ床面積で需要を受け止める器を作る。PUEが1.52から1.20へ改善しながら、増床を含めたサイト全体の年間消費電力が増える経路はここにある。比率指標の改善と絶対量の増加は同時に起こる。インベントリに入るのは絶対量だけだ。
水の相殺 — WUEの増加をどう正味に織り込むか
液冷の方式によって水の増減は逆向きになる。直接液冷で二次ループを閉じ、一次側に水冷チラーと冷却塔を使う構成では、蒸発水量が増えてWUEは上昇する。同じ直接液冷でもドライクーラーや乾式冷却を併用すれば水消費はほぼゼロに近づくが、外気温が高い時期に補助冷凍機が動いて電力が増える。水と電力はトレードオフの関係にある。
GHGプロトコル上、水使用は排出項目ではない。したがって「電力が下がり水が増えた」場合、CO2換算の正味削減はプラスのまま計上される。相殺されない。だがCDPのWater Security質問書と、TNFD提言のLEAPアプローチに沿った依存・インパクト評価では、水取水量と水ストレス地域での操業が独立した報告項目になる。CO2単独の正味削減を強調した開示は、水の報告と整合性を問われる構図を作る。
| 冷却方式 | 施設電力の方向 | 水消費の方向 | GHG上の扱い | 水関連開示(CDP Water / TNFD)での現れ方 |
|---|---|---|---|---|
| 直接液冷+水冷チラー・冷却塔 | 大幅減 | 増加 | 削減として計上 | 取水量増として報告、水ストレス地域では不利 |
| 直接液冷+ドライクーラー | 減(夏季は限定的) | ほぼ変化なし | 削減として計上 | 取水量は中立 |
| 単相・二相浸漬冷却 | 大幅減 | 減(閉鎖系) | 削減として計上 | 取水量が小さく、不利に働きにくい |
| 参考:リアドア熱交換(空冷の改良であり液冷ではない) | 中程度減 | 既存冷却設備に依存 | 削減として計上 | 既存施設の報告値を踏襲 |
出典:Climate tech news(CTJPN)試算(前提は本文)
前提:新設・同一IT負荷での方式比較。CDP/TNFDは取水量と水関連の依存・インパクトを報告させる枠組みであり、低水消費が自動的に加点される仕組みではない。
水ストレスの高い立地では、ドライクーラー併用または浸漬冷却が開示上の説明を容易にする。電力削減幅だけで方式を選ぶと、水の報告で説明負担が増える。逆に水の潤沢な立地では水冷チラー併用の電力メリットを取るのが合理的だ。立地別に方式を分けることが、開示と省エネの両立解になる。
契約形態別の帰属 — コロケーション・専用ラック・クラウド
ここが実務上の核心である。GHGプロトコルのCorporate StandardとScope 2 Guidanceは、運営管理権(operational control)の所在などで境界を引く。冷却設備の運営管理権はほぼ常にDC事業者側にある。したがって冷却方式の変更による電力削減は、物理的には事業者のScope 2削減として最初に現れる。
コロケーション(共用ラック)では、テナントは自社IT機器の電力を直接購入していない。事業者のサービスを購入している。この場合、テナントの計上先はScope 3カテゴリ1(購入した財・サービス)か、資産の性質によってはカテゴリ8(上流リース資産)になる。事業者から受け取るのは配分後の電力量と排出係数であり、PUEは事業者側の管理領域の数字だ。配分方法(ラック数按分、電力実測按分、床面積按分)によって、同じ施設でもテナントに配分される量は変わる。電力実測按分を契約で確保したテナントだけが、自社の省電力努力を数字に反映できる。
専用ラックで自社設備を持ち込み、電力を自社名義で契約する構成では、IT電力はテナントのScope 2になる。冷却電力は事業者名義のままなので事業者のScope 2だ。したがって液冷化による冷却設備電力の削減は、テナントのScope 2にはほぼ現れず、Scope 3(購入した冷却サービス分)に出る。テナントのScope 2を下げるのはサーバ内蔵ファン動力の削減分だけである。この非対称が、専用ラック利用企業で最も誤解されやすい点だ。
クラウド(IaaS/PaaS)では、テナントはカテゴリ1で計上する。冷却改善は事業者が公表する排出係数やカーボンフットプリントツールの数値が更新されるまでテナントの数字に現れない。利用実績データ自体は月次で提供される例もあるが、第三者検証を経た確定係数の更新は年次が中心で、削減の実現時点と計上時点の間に数四半期から1年超のずれが生じる。
| 契約形態 | IT電力の計上先 | 冷却電力の計上先 | 液冷改善がテナントに現れる経路 | 反映までの時間 |
|---|---|---|---|---|
| コロケーション(共用) | テナントScope 3(Cat.1/8) | テナントScope 3 | 配分後kWh・係数の更新 | 四半期〜年次 |
| 専用ラック(自社電力契約) | テナントScope 2 | 事業者Scope 2 | Scope 3が主、ファン動力分のみScope 2 | 月次〜四半期 |
| 自社所有DC | テナントScope 2 | テナントScope 2 | Scope 2に直接 | 即時(月次検針) |
| クラウド IaaS/PaaS | テナントScope 3(Cat.1) | テナントScope 3(Cat.1) | 事業者公表係数の更新 | 数四半期〜1年超 |
出典:Climate tech news(CTJPN)試算(前提は本文)
前提:運営管理権アプローチを採用し、電力契約の名義を上表どおりとした場合の整理。反映までの時間は報告サイクルの一般的な設計からの推計。
削減を自社の数字として最も速く、最も確実に取れるのは自社所有DCである。次が専用ラックだが、冷却分はScope 2に入らないため削減幅は限定される。クラウドが最も遅く、最も間接的だ。Scope 2削減目標を抱えるCFOにとって、液冷化は投資効率の低い選択になりうる。逆にScope 3削減が主戦場の企業にとっては、クラウド・コロケーションの冷却改善が有効な削減経路になる。目標の立て方と契約形態が整合していないと、投資が数字に結びつかない。
二重計上の構造も整理しておく。事業者がScope 2で削減を計上し、テナントがScope 3で同じ削減を計上する。これはGHGプロトコルの設計上正しい。問題は両者が外部向けに「削減貢献量」として足し算を示すときだ。削減貢献量(avoided emissions)はインベントリとは別の概念であり、同じ物理削減を複数主体が主張する構図が構造的に起こる。SBTiの枠組みでも削減貢献量は企業目標の達成にカウントされない。営業資料で削減量を訴求するなら、インベントリ上の帰属と削減貢献量の主張を明確に分けて書くのが安全だ。
課題・反論・代替視点
最も強い反論は「PUEやWUEに拘泥せず、サイト全体の絶対kWhと絶対tCO2だけを見ればよい」という立場だ。これは原理的に正しい。絶対量だけがインベントリに入り、絶対量だけが気候に効く。だがテナントは自社に配分された絶対量しか見えず、その配分の妥当性を検証する手段がPUEと配分方法の開示以外にない。比率指標は、配分の透明性を担保する補助的な道具として機能している。絶対量主義は正しいが、情報の非対称性を解けない。
二つめの反論は、分解の精度に対するものだ。世代交代と冷却変更を分離するには、更新前後で同一ワークロードのベンチマークを取ることが前提になる。本番環境でそれを実施できる企業は限られる。実務では推計の域を出ないことが多く、本稿の表にある寄与率も試算値である。精度を求めるより、分解の枠組みを固定して年次で一貫して適用するほうが、トレンドの解釈には役立つ。
三つめは水の扱いへの代替視点である。水使用量をCO2に換算して正味に織り込むアプローチ(取水・処理・送水のエネルギー分をScope 3に入れる)も存在する。ただし換算係数は地域の上下水道のエネルギー原単位に強く依存し、国際比較には耐えない。水を独立したKPIとして別建てで開示するほうが、現在の開示枠組みとの整合性は高い。
四つめに、液冷が常に電力削減をもたらすという前提自体への疑問がある。冷却水の供給温度を高く設定(高温水冷却)できれば冷凍機を止められるが、既存施設の改修で一次側を変えられない場合、冷凍機は稼働し続ける。このとき液冷化による施設電力の削減幅は設計値を下回る。新設と改修で経済性は大きく異なる。
日本市場・日本企業への示唆
日本では省エネ法のベンチマーク制度にデータセンター業がすでに組み込まれており、事業者はPUEに相当する比率指標で評価を受ける立場にある。経済産業省・資源エネルギー庁の枠組みの下で、事業者側には比率指標を改善する制度的インセンティブが存在する。この構造は、事業者が「PUEの改善」を顧客訴求に使う動機を強める。テナント側は、事業者の制度対応の都合で提示される指標と、自社のインベントリに必要な数字(配分後kWh)が別物であることを前提に交渉するのが合理的だ。
海外の液冷事例をそのまま持ち込めない理由は、気候条件と水条件にある。北欧や米国内陸の事例は低い外気温を前提に外気冷却・ドライクーラーで年間を通じて冷凍機を止められるが、日本の夏季の湿球温度ではこれが成立しにくい。高温水冷却を前提とした設計でも、夏季の補助冷凍機運転が入り、通年のPUE改善幅は海外事例より小さく出る。一方で日本は水ストレスが相対的に低い地域が多く、水冷チラー・冷却塔併用の選択が水関連開示上の重い説明負担になりにくい。電力削減を優先する設計が取りやすいという意味では有利な条件だ。
SSBJ基準の適用が進む中で、Scope 3の算定根拠の説明責任は上がっていく。コロケーション利用企業が事業者からの配分根拠を文書で押さえていない場合、算定方法の記述そのものが書けない。契約更新のタイミングで、配分方法(電力実測按分の採用)、測定カテゴリの明示、月次の配分後kWh報告、水使用量の施設単位開示をまとめて要求するのが現実的な打ち手になる。これは追加費用なしで通る交渉余地が残っている領域だ。
国内のGPU需要増を背景に、液冷対応の新設案件は増え続けている。新設であれば一次側の設計自由度が高く、高温水冷却と外気利用を前提にできる。改修案件と新設案件で、同じ「液冷化」という言葉が意味する削減幅は大きく違う。テナントが事業者の訴求を評価するときは、新設か改修かを最初に確認するだけで期待値の精度が上がる。
まとめ
液冷化による電力削減は実在するが、それが誰の数字になるかは物理ではなく契約で決まる。冷却設備の運営管理権が事業者側にある限り、冷却設備電力の削減は事業者のScope 2に現れ、テナントにはScope 3経由でしか届かない。専用ラックでテナントのScope 2が動くのは、サーバ内蔵ファン動力の削減分に限られる。自社所有DCを持つ企業だけが冷却分までScope 2で直接受け取れる。この非対称を理解せずにScope 2削減目標の達成手段として液冷化を期待すると、投資と目標が噛み合わない。
削減量の内訳も開いたほうがよい。「液冷化で数割下がる」と語られる効果の大半はサーバ世代交代による性能/W改善であり、冷却方式の変更そのものの寄与は施設電力側に限られる。液冷の経済価値は削減量ではなく、高密度実装を可能にする物理的前提にある。そして高密度化は総電力を押し上げる。PUEが1.52から1.20に改善しながらサイトの絶対排出量が増える事態は、比率指標と絶対量を混同する限り説明できない。水の方向も方式と立地で逆転し、CO2単独で正味削減を訴求すると水関連開示との整合性を問われる場面がある。
今後数年のうちに、国内のGPU向けDC新設が順次稼働に入り、SSBJ基準下でのScope 3算定根拠の記述精度が投資家の比較対象になる。このとき、事業者からの配分方法と測定カテゴリを契約で固定できていた企業と、PUEの改善幅という事業者側の指標を受け取るだけだった企業の間で、開示の説明力に差が出る。契約条項の設計が削減量の計上可否を決める分水嶺になる。
主要出典
- GHG Protocol「A Corporate Accounting and Reporting Standard(Revised Edition)」— 連結アプローチ(運営管理権)、リース資産の扱い https://ghgprotocol.org/
- GHG Protocol「GHG Protocol Scope 2 Guidance」— 電力の帰属と報告方法 https://ghgprotocol.org/
- GHG Protocol「Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard」— カテゴリ1・カテゴリ8の定義、バリューチェーン内の重複の扱い https://ghgprotocol.org/
- ISO/IEC 30134-2(Information technology — Data centres — Key performance indicators — Part 2: Power usage effectiveness, PUE)、ISO/IEC 30134-9(Part 9: Water usage effectiveness, WUE)ISO/IEC https://www.iso.org/
- 経済産業省・資源エネルギー庁「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)ベンチマーク制度」関連資料(データセンター業を含む対象業種・指標) https://www.enecho.meti.go.jp/
- 経済産業省「データセンターの省エネ・立地等に関する政策資料・審議会資料」 https://www.meti.go.jp/
- CDP「Water Security Questionnaire」— 取水量・水ストレス地域での操業に関する報告項目 https://www.cdp.net/
- TNFD「Recommendations of the Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」およびLEAPアプローチ関連ガイダンス https://tnfd.global/
- SSBJ「サステナビリティ開示基準(適用基準・一般開示基準・気候関連開示基準)」— 温室効果ガス排出の算定・開示要求 https://www.ssb-j.jp/
- SBTi「Corporate Net-Zero Standard」— 削減貢献量(avoided emissions)が企業目標の達成に該当しない旨 https://sciencebasedtargets.org/
- Open Compute Project(Cooling Environments 関連ワークストリームの公開技術文書)— 液冷構成におけるCDU・二次ループの構成と電力供給経路 https://www.opencompute.org/
- Google「Environmental Report」— 自社データセンター群の加重平均PUE公表値 https://sustainability.google/
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