Scope 3カテゴリ2とは何か
Scope 3カテゴリ2(資本財)は、企業が購入・取得した資本財(設備・機械・建物・インフラ等)の製造から廃棄までのライフサイクル全体のGHG排出量を計上するカテゴリだ。製造業・建設業・エネルギー企業などで排出量が大きくなる傾向がある。GHGプロトコル「Scope 3計算・報告基準」に基づき算定が求められる。
📋 この記事の目次
対象となる資本財の範囲
資本財とは、財務会計上「固定資産」として資産計上される物品を指す。主な対象は以下の通り:
- 生産設備・機械装置・工作機械
- 建物・構築物(工場・倉庫・オフィスビル)
- IT機器・サーバー・通信機器
- 輸送機器(社用車除く、物流用トラック・フォークリフト等)
- 再生可能エネルギー設備(太陽光パネル・風力タービン等)
注意:消耗品・サービス購入はCat.1(購入した製品・サービス)、リース資産はCat.8(上流リース)またはCat.13(下流リース)に分類される。
算定方法の選択:3つのアプローチ
方法1:サプライヤー固有データ(推奨)
設備メーカーから製品カーボンフットプリント(PCF)データを取得し、調達量を乗じる。最も精度が高いが、サプライヤーの開示体制が整っていないと入手困難。
排出量 = 調達資本財のPCF(t-CO₂e/台)× 調達台数
方法2:購入金額×排出原単位
最も実務的。設備投資額(購入価格)に業種別の排出原単位を乗じる。
排出量 = 資本財購入額(百万円)× 排出原単位(t-CO₂e/百万円)
環境省の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」では産業連関表ベースの原単位(IDEA/3EID等)を推奨している。
方法3:物理的数量×原単位
設備の重量・材料組成が判明している場合、素材別の排出原単位を用いる(例:鉄鋼t-CO₂e/t、アルミt-CO₂e/t)。製品詳細が把握できる場合に有効。
ステップ別:算定の実務手順
- 資本財リストの抽出:財務システムから当期取得固定資産一覧を抽出。勘定科目「機械装置」「建物及び構築物」「工具・器具・備品」等を対象に
- 算定方法の決定:各資産カテゴリごとに、PCFデータ入手可否を確認しアプローチを選択
- 原単位の選択:環境省ガイドライン推奨の3EID/IDEAデータベース、またはサプライヤーから取得したPCF値を使用
- 取得年度の扱い:GHGプロトコルでは原則「取得年度に全排出量を計上」(減価償却按分方式も許容されるが要開示)
- 集計・検証:前年比・原単位変動を確認。大幅変動は設備更新・M&A等のイベントによるものか確認
排出原単位の参考値(2024年版)
| 資本財カテゴリ | 排出原単位 | データソース |
|---|---|---|
| 一般機械製造業 | 0.42 t-CO₂e/百万円 | 3EID |
| 電気機械・電子部品 | 0.38 t-CO₂e/百万円 | 3EID |
| 建設・土木工事 | 0.55 t-CO₂e/百万円 | 3EID |
| 鉄鋼製品 | 2.1 t-CO₂e/t | worldsteel |
| 太陽光パネル | 0.02〜0.05 t-CO₂e/Wp | IEA/メーカー別EPD |
よくある誤りと注意点
- 二重計上:グループ会社間の資本財移転は原則計上しない(外部サプライヤーからの取得のみ対象)
- M&A取得資産:買収時に取得した固定資産は報告境界・基準年の見直しが必要
- リース資産の誤分類:ファイナンスリース資産は資本財(Cat.2)、オペレーティングリースはCat.8に分類
- 建設仮勘定:完成前の建設中資産は完成年度に計上するのが一般的
削減レバーとサプライヤーエンゲージメント
Cat.2の削減には低炭素設備への切り替えとサプライヤーの製造工程脱炭素化支援の2軸がある。具体的なアクションは以下の通り:
- 設備調達基準への「製品カーボンフットプリント開示」の組み込み
- グリーンスチール・低炭素アルミ等の低炭素素材仕様の採用
- 太陽光・風力など再エネ設備優先調達によるライフサイクルCO₂の削減
- 設備更新・延命による廃棄時排出の抑制
SBTi・CDP報告との整合
SBTiのScope 3目標設定では、Cat.2は「Scope 3排出量上位カテゴリ」に該当する場合に目標設定が必要となる(全Scope 3排出量の上位67%をカバーするカテゴリが対象)。製造業・重工業では上位カテゴリになりやすいため、早期の算定精度向上と削減計画策定が求められる。
まとめ
Scope 3カテゴリ2の算定は、財務データ(固定資産台帳)と排出原単位データベースを組み合わせることで多くの企業が対応可能だ。まず「購入金額×産業連関表原単位」で全体像を把握し、重要性の高い資産カテゴリについてサプライヤー固有データへ段階的に精緻化していく戦略が実務的に有効。GX-ETSの本格化・SBTi要求の厳格化を見据え、2025年度中の算定体制整備が急務だ。