Scope 3のカテゴリ12(販売した製品の廃棄処理)は、顧客が製品を使用後に廃棄する際の処理排出量を対象とする。製品設計・リサイクル率・廃棄処理方式が排出量を左右する「設計責任」カテゴリだ。EU拡大生産者責任(EPR)の強化と合わせて、Cat.12管理は企業の製品戦略の核心に位置づけられる。
Cat.12の算定スコープ
GHGプロトコルのScope 3 カテゴリ12は「販売した製品が使用後に廃棄・処理される際の排出量」です。対象:
- 販売した固体廃棄物の最終処理(焼却・埋立・リサイクル・堆肥化等)に伴う排出量
- 廃棄前の廃水処理に伴う排出量(液体製品の場合)
- 製品の使用後処理に関する消費者・廃棄物処理業者の活動から生じる排出量
重要な除外:製品の使用時エネルギー消費はCat.11(カテゴリ11)。修理・リース等はCat.13・14。
算定方法
廃棄物種類別・処理方法別アプローチ
Cat.12の算定は「販売製品の廃棄時の素材組成 × 処理方法別割合 × 処理排出係数」で求めます:
- 製品の素材組成の把握:プラスチック・金属・ガラス・紙等の重量比率
- 廃棄処理方法の推定:市場(国)ごとの廃棄物処理統計に基づく処理方法割合(焼却率・埋立率・リサイクル率等)
- 排出係数の適用:素材 × 処理方法ごとのCO₂排出係数(環境省ガイドライン・IPCC等)
製品販売量・素材組成・廃棄市場の処理統計があれば算定可能です。多くの消費財メーカーが採用するアプローチです。
業種別の排出規模感
- 電機・IT機器(PCメーカー・スマートフォン等):電子廃棄物(e-waste)の焼却・埋立に伴う排出。プラスチック筐体・基板・バッテリーが主な排出源。
- 食品・飲料:包装材(プラ容器・紙パック・缶)の廃棄処理。Cat.1(農業排出)が主要だが、Cat.12も貢献が大きい。
- 自動車:廃車処理の排出量(シュレッダーダスト・廃液等)。ただし自動車のLCA排出はCat.11(使用時燃料消費)が圧倒的に大きく、Cat.12の相対的重要性は低い。
- アパレル・繊維:ファストファッションの大量廃棄。世界で毎年大量の衣料品が焼却・埋立される。Cat.12がScope 3の主要カテゴリになりうる業種。
削減レバー:製品設計と廃棄処理改善
1. 製品の素材・設計変更
- 軽量化:製品重量の削減はCat.12(廃棄重量)・Cat.1(原材料調達)の両方を削減
- 単一素材化・分解容易化:複合素材をやめることでリサイクルしやすい設計に。Apple・Fairphoneが先行。
- リサイクル材の使用率向上:バージン材からリサイクル材へ切り替え(Cat.1削減と連動)
- 有害物質フリー化:廃棄時の有害物質排出削減(RoHS指令対応等)
2. リサイクル率の向上
廃棄処理方式をリサイクルにシフトすることでCat.12の排出係数が大幅に低下します。企業がコントロールできる手段:
- 回収・リサイクルプログラムの運営(製品回収インフラの整備)
- 消費者への廃棄方法の情報提供(分別・資源ゴミ回収への誘導)
- 廃棄物処理業者との連携(リサイクルフロー確保)
3. EPR(拡大生産者責任)への対応
欧州のEPR制度(容器包装指令・廃電気電子機器指令・廃バッテリー規則等)は、製造・輸入業者に廃棄物の回収・リサイクルを義務付けます。EU市場に製品を販売する日本企業は直接適用されます。EPR対応コストをCat.12の削減投資として設計することで、コスト管理とScope 3削減が一致します。
Cat.12と製品ライフサイクル戦略の接続
Cat.12の削減は製品のライフサイクルを延ばす「サーキュラーエコノミー戦略」と不可分です:
- 修理サービス・スペアパーツ供給:製品寿命を延ばすことでCat.12排出を先送りし、総量削減。
- リース・サービタイゼーション:製品を売らず「機能を売る」ことで廃棄のタイミングをメーカーがコントロール。使用済み製品の回収・再製造・再販が可能に。
- デジタル製品パスポート(DPP):EU ESPRで義務化されるDPPにより、製品の素材組成・リサイクル方法がデジタルで管理され、廃棄時の適切処理率が向上。
まとめ
Scope 3 Cat.12は「製品を作った企業が廃棄まで責任を持つ」設計責任の指標です。製品の素材設計・軽量化・単一素材化・リサイクル対応設計が直接的な削減レバーであり、EU EPR・DPP規制への対応と方向性が一致しています。Cat.12管理を「廃棄物処理の問題」ではなく「製品ライフサイクル設計の問題」として経営課題化することが、2030年代の製品競争力の源泉です。