CORSIA(国際航空のカーボンオフセット・削減スキーム)とICVCM(ボランタリーカーボン市場整合評議会)は、カーボンクレジットの品質評価を国際的に標準化しつつある。これらの基準を理解することは、クレジット購入者・販売者・投資家がVCMで適切な意思決定をするための前提条件だ。
CORSIAとは
CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)は、国際民間航空機関(ICAO)が策定した国際航空のGHG削減スキームです:
- 対象:国際線(2国間以上を跨ぐ)の航空会社
- 仕組み:2019〜2020年平均排出量を超えた排出増分を、CORSIA適格クレジットでオフセットする義務
- 適用フェーズ:2021〜2023年(パイロット)→ 2024〜2026年(第1フェーズ、自主)→ 2027年〜(第2フェーズ、強制参加)
CORSIAは航空業界の炭素市場への需要窓口として機能し、年間数億ドル規模のクレジット需要を生み出しています。
CORSIA適格クレジットの基準
CORSIAが適格と認定するクレジットプログラム(2024年時点):
- Verra(Verified Carbon Standard、VCS)
- Gold Standard
- American Carbon Registry(ACR)
- Climate Action Reserve(CAR)
- Architecture for REDD+ Transactions(ART)
CORSIA適格クレジットは「追加性」「永続性」「二重計上防止」「MRVの精度」の基準を満たすことが必須。ICVCMのCCPラベル取得クレジットはCORSIAとの整合が高い設計になっています。
ICVCM コア・カーボン原則(CCP)の詳細
ICVCMは2023年にCCP(Core Carbon Principles)とその評価フレームワークを正式に公開しました。10のCCPが二重のレベルで評価されます:
プログラムレベルの評価
クレジット認証プログラム(Verra・Gold Standard等)全体の品質を評価。ガバナンス・MRVの精度・二重計上防止メカニズムがプログラムとして備わっているかを審査。
クレジットカテゴリレベルの評価
特定の方法論(REDD+・植林・省エネ等)が追加性・永続性・ネットGHGに関する要件を満たしているかを評価。CCPラベルは「プログラム+方法論」の両方が承認されて初めて付与されます。
CCPラベルの市場インパクト
CCPラベル付きクレジットは:
- 非CCPクレジットに対して価格プレミアム(20〜50%以上)が見込まれる
- 金融機関・大企業がCCPを調達基準に組み込む動きが加速
- 将来的にCORSIAの適格要件にCCPが組み込まれる可能性
ただし、2024〜2025年時点でCCPラベルを取得した方法論はまだ限定的であり、市場の移行期間があります。
クレジット購入者の品質評価実務
企業がVCMでクレジットを購入する際の品質チェックリスト:
- 認証プログラムの確認:Verra VCS・Gold Standard・ACR等のCORSIA適格プログラムに登録されているか
- CCPラベルの有無:ICVCMのCCPラベルが付与されているクレジットか(現時点では限定的)
- 追加性の評価:プロジェクトがなければ排出削減が起きなかったことの論証(保守的な追加性評価を行っているか)
- 永続性リスクの開示:REDD+では「バッファープール(リバーサルリスクへの予備クレジット)」の水準確認
- ヴィンテージ(発行年):古いヴィンテージ(5年以上前)のクレジットは追加性への疑問を持たれやすい
- 二重計上の確認:プロジェクト国がパリ協定のNDC(国別貢献)で同一排出削減量を計上していないかの確認
航空会社のCORSIA対応実務
日本の航空会社(ANA・JAL等)はCORSIA第2フェーズ(2027年〜)の強制適用に向けた準備が必要です:
- 排出量の正確な計測(実際の燃料消費データに基づくMRV体制)
- CORSIA適格クレジットの調達戦略(長期購入契約・価格ヘッジ)
- SAF(持続可能な航空燃料)使用によるCORSIA義務の削減
まとめ
CORSIA・ICVCMはVCMの「品質インフラ」として機能しており、高品質クレジット(CCPラベル・CORSIA適格)と低品質クレジットの価格差が今後拡大します。購入者は品質チェックリストに基づいた調達デューデリジェンスを実施し、販売者はCCPラベル取得方法論の採用でクレジット価値を最大化することが、VCM参加の実務水準として求められます。