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Scope 3 Cat.6/7(出張・通勤)の算定と削減 — テレワーク・出張管理・モビリティ戦略の実務

Scope 3のカテゴリ6(出張)・カテゴリ7(通勤)は、算定が比較的容易な一方、コントロールが難しいカテゴリとして知られる。テレワーク推進・出張管理・EV通勤補助など、現実的な削減策とKPI設計を解説する。

Cat.6(出張)の算定方法

カテゴリ6は社員の業務出張(航空・新幹線・宿泊等)の排出量です。算定アプローチ:

距離ベース法(推奨)

出張記録(交通費精算データ)から区間・交通手段・距離を抽出し、交通手段別の排出係数を乗じて算定します。航空の排出係数:短距離(〜500km)・中距離(500〜1,500km)・長距離(1,500km以上)で係数が異なります。航空の放射強制指数(RFI)を適用するかどうかで排出量が大きく変わります(RFI係数は1.7〜3倍。GHGプロトコルは任意だが、TCFDでは推奨)。

支出ベース法

交通費・宿泊費の支出額に環境省の産業連関表ベース係数を乗じて算定。データ収集が容易だが精度が低い。初年度の概算や、細かい交通記録が取れない企業向け。

Cat.7(通勤)の算定方法

カテゴリ7は全社員の通勤交通(電車・バス・自家用車・バイク等)の排出量です。算定アプローチ:

  • 社員アンケート:通勤手段・片道距離を社員全員に調査し、交通手段別排出係数を乗じて算定。最も精度が高いが調査コストがかかる。
  • 推計法:職種・勤務地ごとに代表的な通勤手段・距離を設定し全社員に当てはめる。アンケート代替として利用。
  • 在宅勤務の考慮:テレワーク日数分の通勤排出量はゼロとして算定。在宅勤務中のエネルギー消費(暖房・PC等)についてはGHGプロトコル上Cat.7に含めることが任意とされています。

業種別の排出規模感

Cat.6+7の全Scope 3に対する比率は業種によって大きく異なります:

  • コンサルティング・IT・金融(高比率):製造設備を持たず、人件費・出張が事業の中心。Cat.6+7がScope 3の20〜40%を占めることも。
  • 製造業・物流業(低比率):原材料調達(Cat.1)・輸送(Cat.4)・販売製品(Cat.11)の排出が大きいため、Cat.6+7は全体の数%以下が多い。

サービス業・知識産業ではCat.6+7が最重要のScope 3カテゴリとなります。

削減策の設計

出張削減(Cat.6)

  • テレビ会議ファースト方針:「まずリモートで対応できるか検討する」をポリシー化。出張承認フローに「リモート代替の検討」を組み込む。
  • 航空→新幹線モードシフト:国内1,000km以内の移動を原則新幹線に切り替え。CO₂排出量は航空の1/8〜1/10程度(新幹線は電力由来であり、再エネ電力比率によってさらに削減可能)。
  • エコノミークラス徹底:ビジネスクラスはエコノミー比2〜3倍の排出(座席面積分だけ割り当て排出量が多い)。 国際出張のビジネスクラス使用基準の見直しが有効。
  • 出張カーボン予算制:部門別・社員別に年間出張CO₂予算を設定し、予算内で出張計画を立てるよう促す。

通勤削減(Cat.7)

  • テレワーク率向上:週2〜3日の在宅勤務を定着させることでCat.7を40〜60%削減可能。コロナ後のテレワーク維持率がCat.7の水準を直接決める。
  • EV通勤補助:社員の自動車通勤者にEV・PHV購入補助・充電設備整備を提供することで、自家用車通勤のCat.7排出係数を下げる。
  • 自転車通勤促進:シャワー設備・駐輪場整備・自転車購入補助。短距離通勤者のCO₂排出ゼロ化。
  • 定期券・交通費のグリーン化:公共交通の利用促進(車通勤補助から公交通補助への切り替え)。

KPI設計と報告

Cat.6/7管理のKPIとして有効な指標:

  • 社員一人当たり出張排出量(t-CO₂/人/年)
  • 国内出張のモード別比率(航空/新幹線/その他)
  • テレワーク率(%)と月次モニタリング
  • 自動車通勤者のEV比率(%)

CDP質問書でCat.6/7の開示が求められており、GRI(GRI 305-3)対応にも必要なデータです。経費精算システム(Concur・SAP等)からCat.6のデータを自動抽出する仕組みが、データ収集コストを下げる最も効果的な方法です。

まとめ

Cat.6/7はサービス業・コンサルティング・IT・金融にとってScope 3の最重要カテゴリです。テレワーク方針・出張モードシフト・出張カーボン予算の3施策で大幅削減が可能であり、企業文化・働き方改革とも連動します。削減目標の設定と経費精算データからの自動算定体制を整備することで、Scope 3 Cat.6/7管理を「見える化→削減→報告」のサイクルに乗せることができます。

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