再エネ普及で出現する「ダックカーブ」とは
ダックカーブ(Duck Curve)と呼ばれるこちらの曲線。文字通り、その形状がアヒルの背中のように見えることからこのように呼ばれています。ダックカーブは、再生可能エネルギーの導入によって発生する電力需要と供給のグラフで、特に太陽光発電の導入が進んだ地域で見られる現象です。
ダックカーブの特徴
ダックカーブは、以下のような特徴を持ちます。
・朝方の需要ピーク:
太陽が昇る朝方は、一般的に電力需要が高まります。人々が起床し、家庭やビジネスでの電力使用が活発になるためです。
・昼間の低い需要:
太陽光発電は昼間に最も効率的に発電されるため、昼間は電力需要が比較的低下します。太陽光発電は再生可能エネルギーであり、太陽の光を利用して発電します。この時期は需要ピーク時でも太陽光発電が十分な電力を供給するため、需要がほぼ満たされることがあります。
・夕方の需要急増:
太陽が沈み始める夕方になると、一日の活動がピークに達し、電力需要が再び急増します。家庭での家事や料理、ビジネスでの作業などが重なり、需要が高まるためです。
ダックカーブの示す課題
1つ目の課題は電力の需給調整です。夕方にかけての電力需要の急激な変動は、電力供給会社の負担を増加させます。ベース電源となる天然ガス火力発電所などの発電量を需要に合わせて急激に増やす必要があります。供給が需要に追い付かなければ、停電に繋がります。一方で、あらかじめ火力発電所の発電量を高めに設定した場合、過剰発電を防ぐために太陽光発電を制限する必要があるかもしれません。日本でも、夏の九州では、「出力制御」と呼ばれるこの問題が発生しています。せっかく再エネで発電できるのに、それを規制するなんて本末転倒だと思われるかもしれませんが、電力の需給調整はそれだけ難しいということです。※電力調整については、こちらの記事
もう1つの課題は経済的な課題です。太陽光発電など再エネの発電量が増えるにつれ、従来の火力発電所などは稼働時間や発電量が減少します。既存の発電施設の稼働率の低下は、電力会社の収益を減少させます。1日でこれだけ大きく需要が変化する状況で、火力発電所の下支えが減りすぎると、脆弱なインフラとなりかねません。カリフォルニア州のパロアルト市では、再エネ100%の電力が供給されていますが、昨夏の熱波の際は、夕方~夜間に、住民が一斉にエアコンをつけたため、電力供給が追い付かず、3日間連続で毎晩停電が起きました。
ダックカーブが生み出す新たなビジネス
一方、ダックカーブはエネルギー貯蔵という新たなビジネス機会を生み出しています。バッテリーなどの大規模なエネルギー貯蔵システムの大規模な導入により、太陽光で昼間に発電された一部の電力を貯蔵し、夜間に使用することができます。昼間の電力を貯蔵することで、ダックカーブの曲線が平坦化され、夜間に貯蔵した電力を供給することで、再エネを最大限活用することが可能になります。カリフォルニア州では急速にバッテリー貯蔵が建設されており、2023年4月現在で4.9 GWに成長しています。(一般的に1GW=原発一基分と言われています)