脱炭素リサーチ:鉄鋼業界の脱炭素化 ① 

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様々な業界で脱炭素化が進んでいますが、鉄鋼業界はその中で最も脱炭素化が難しいといわれる業界の一つです。今回は、その鉄鋼業界の脱炭素化について分析します。

  1. 市場規模
  2. インドの台頭
  3. 鉄鋼業の脱炭素化を進める画期的なテクノロジー
  4. 鋼鉄の精製プロセス比較
  5. 大手企業の脱炭素に向けたアプローチ

市場規模

2021年の粗鋼生産量は約19億51百万トンで、世界の鉄鋼需要は2050年までに3分の1以上増加すると予測されています。世界的なエネルギーと気候目標を達成するには、鉄鋼産業からの排出量を 2050 年までに少なくとも 50% 削減する必要があります。大幅な排出削減は、CO2ゼロ排出の製鉄技術の革新なしには達成できません。持続可能な開発シナリオにおける 2050 年までの累積排出削減量のうち、30% は現在実証段階または試作段階にある製鉄技術によるものです。
出典:World Steel Association

出典:World Steel Association

インドの台頭

中国をはじめアジアが鉄鋼の一大生産地となっていますが、2050年には世界の鉄鋼のほぼ5分の1がインドで生産されると予想されています。インドは既にに世界第2位の鉄鋼生産国であり、2050年までに年間生産量を、2019年のEUの総生産量の2倍に相当する量増やすと予想されています。インドでは、さまざまな課題に取り組むための多様な技術ポートフォリオが出現しています。2050年までにCCUSが26%、水素を利用した直接還元鉄DRIは22%を占める見込みです。(参考IEA) 

鉄鋼業の脱炭素化を進める画期的なテクノロジー

カーボンニュートラルの実現に向けて必要とされる大幅な削減を達成するには、製鉄へのまったく新しい変革的なアプローチが必要です。
CO2 を排出せずに工業規模で製鉄するための有望なアプローチがいくつかあります。これらは、炭素回収・利用(CCUS)電気分解水素還元の 3 つの大きなカテゴリに分類されます。それぞれのカテゴリで、クライメイトテック関連のスタートアップが技術開発を進めています。

出典:World Steel Association

鋼鉄の精製プロセス比較

鋼鉄は精製プロセスごとに二酸化炭素の排出量が異なります。ここでは、ADI-Analyticsのデータをもとに、各プロセスの二酸化炭素排出量を比較しています。現在の鉄鋼生産の大部分を占める塩基性酸素転炉(BOF)が最も二酸化炭素排出量が多く、バイオ燃料直接還元鉄(DRI)、そして、再エネ由来の電気+電気アーク炉(EAF)が最も二酸化炭素排出量が少ないことがわかります。

出典:ADI-Analytics

大手企業の脱炭素に向けたアプローチ

続いて、大手企業の脱炭素化に向けた取り組みを分析します。
ここでは、以下の企業を取り上げます。
NUCOR:アメリカ最大の鉄鋼メーカー
Arcelomittal:粗鋼生産量世界2位、ルクセンブルクの鉄鋼会社U.S.Steel:アメリカと中央ヨーロッパに大きな生産拠点をもつ総合製鉄会社
EVRAZ:ロシアを主な事業基盤とする大手鉄鋼メーカー
日本製鉄:日本最大手の鉄鋼メーカー 粗鋼生産量世界3位
POSCO:韓国最大の鉄鋼メーカー

出典:ADI-Analytics

次回は、鉄鋼業界の脱炭素化を後押しすべく、技術開発を進めるスタートアップをご紹介します。

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