クライメートテックトレンド バッテリー・エネルギー貯蔵編12

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脱炭素社会の実現に向けて、アメリカを中心に海外のクライメートテック(脱炭素)関連のスタートアップを紹介するシリーズ、「クライメートテックトレンド」です。

クライメートテックの中でも特に注目度の高いバッテリー・エネルギー貯蔵(LDES)関連のスタートアップをご紹介してきました。12回目となる今回は、日本のクライメートテックをご紹介します。

  1. APB
  2. CONNEXX SYSTEMS
  3. LE SYSTEM
  4. NExT-e Solutions Inc.
  5. エクセルギーパワーシステムズ

APB

https://apb.co.jp/

拠点:日本   資金調達:Private

全樹脂電池は世界で初めての大面積バイポーラ積層電池。バイポーラ構造という集電体に対して垂直に電流が流れる構造と、高分子樹脂の基本部材への採用を通じて、従来型リチウムイオン電池の課題であった複雑な製造工程や発火リスクなどを大幅に改善しつつ、高エネルギー密度も実現。次世代の電池として期待されている「全樹脂型電池(All Polymar Battery)」の製造、販売を行う慶應義塾大学発のスタートアップ。「全樹脂型電池」は従来のリチウムイオン電池よりも製造コスト・リードタイムを削減することができる上、高い異常時信頼性とエネルギー密度を誇る。形状自由度が高いことも特徴だ。2020年12月には、新東工業および三菱UFJキャピタルを引受先として第三者割当増資を実施。過去2回の調達を含め、100億円を調達した。今回の調達資金は全樹脂電池の第一工場(APB福井センター武生工場)の設立・運営に充当し、全樹脂電池の量産技術の確立、製造販売に向けて事業をより一層加速させる方針だ。

CONNEXX SYSTEMS

拠点:日本   資金調達:Private

鉛+LIBの次世代型ハイブリット蓄電池「Bind Battery®」や「SHUTTLE Battery™」などの開発を行うスタートアップ。「Bind Battery」は“高い安全性”、“ローコスト”、“低温性能が良好”、“高サイクル寿命”等のメリットがある。リチウムイオン電池と鉛電池とを独自の仮想電池方式にて接続し、フロート充電を可能にした新しい蓄電池。鉛電池の過充電吸収反応が、リチウムイオン電池を過充電から保護する。「SHUTTLE Battery™」は鉄と空気の反応によりリチウムイオン電池の何倍ものエネルギーを溜めることを可能にしている。2023年3月には加賀電子を引受先とする資金調達を実施した。今回の調達を通じて、同社の持つ蓄電技術および蓄電システム製品群を活かし、加賀電子が展開する太陽光発電システムや電力インフラなどの販売・サービスにおいて需要家の規模やニーズに応じて最適な蓄電システムを提供するセットソリューションを強化・加速するとともに、中古EVバッテリーのリユース事業の将来展開においては加賀電子のグローバルネットワークを最大限活用し、協業を進めていく方針だ。

LE SYSTEM

https://www.lesys.jp/english/

拠点:日本   資金調達:Private

「バナジウムレドックスフロー電池」と呼ばれる大容量蓄電池向けの電解液を製造するスタートアップ。通常、再生エネルギーの発電には、電気を貯蔵する蓄電池が欠かせない。「バナジウムレドックスフロー電池」は他の蓄電池と比較して耐久性や安全性に優れるが、発電コストが高いことが課題であった。こちらの解決として同社が提示するのがレアメタルの一種であるバナジウムを回収し、電解液を従来の半分以下のコストで製造する技術である。電解液は電池の製造コストの35%を占めており、これを安くすることで電池の普及を狙う。同社は国内外で複数の特許を取得しているほか、久留米の本社では電池セルを設計・試作している。2020年9月には西松建設を引受先に第三者割当増資による2億円の資金調達を実施。同社は現在、バナジウム電解液の量産化をめざして福島県に、生産量5,000㎥/年(売上規模約20億円)の浪江工場(双葉町浪江町)を建設中であり、2021年夏には稼働を開始する予定。

NExT-e Solutions Inc.

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拠点:日本   資金調達:Private

先進のバッテリー制御技術で、E-モビリティの普及促進と、再生可能エネルギーの導入拡大を目指す企業。同社は主にリチウムイオンバッテリーの次世代バッテリーマネジメントシステム(BMS)及びバッテリー関連、モジュールの開発・製造・販売、同モジュールを用いた電池システム等の開発・製造・販売、自動車関連コンサルティングを行う。ビジネスモデルを支える”BMS”とは、リチウムイオン電池で構成された電池システムを安全に効率よく使うため、管理・制御機能をつかさどる重要なコンポーネンツ。充電セル保護機能、充電残量算出機能、電池セルの充電残量を均等化するパラジング機能を持っている。さらに同社では、従来のBMSの枠組みを超えたバッテリー関連モジュールとサービス“B2X”(Battery TO neXt value)を提供する。これはIoTモジュールとの組み合わせにより、リアルタイムでの遠隔監視や各種データ解析が可能になるサービスだ。
2019年7月には四国電力との資本業務提携を締結。さらに同年9月には九州電力と資本業務提携を締結したことを発表した。2023年までにリユース蓄電池を活用した20,000kWh規模の定置用蓄電システムの事業化を目指す方針だ。

エクセルギーパワーシステムズ

https://exergy-power-systems.com/

拠点:日本   資金調達:Private

独自開発したパワー型蓄電池「エクセルギー電池®」を活用した分散型エネルギーサービスを提供する、東京大学発スタートアップ。「エクセルギー電池®」とは、熱を素早く外部に逃がすことができる独自の構造により、一般的な蓄電池の約20~200倍と超高速で充放電が可能な次世代型ニッケル水素蓄電池である。持続可能な社会の実現に向け、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの導入がグローバルで進む一方、それらの比率が増えることで、電力ネットワークが不安定になってしまうという課題が生じている。同社はそれに対するソリューションとして、電力系統の需給バランスを調整する力を開発し、課題解決に努めている。現在は電力の調整力取引市場が先行しているアイルランドや英国でのサービスを展開しており、さらなる拡大を計画している。2023年8月には、八十二サステナビリティ1号投資事業有限責任組合より、資金調達を実施した。これにより、再生可能エネルギーの高まりから予測される電力系統の不安定化や電力品質の悪化に対し、電力の需給調整等のバックアップサービスを効率的に提供することが可能となる。

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