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  1. 概要
  2. 活用事例(ユースケース)
  3. 課題

概要

BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)は、生物資源(バイオマス)をエネルギーとして利用し、その際に発生するCO2を捕捉(キャプチャー)し、地下の貯留施設に貯める技術です。具体的には、植物や他の生物資源を燃やしてエネルギーを生成し、その際に発生するCO2をキャプチャーして、地下の岩層などに安全に貯蔵することで、大気中のCO2濃度を削減し、気候変動の緩和を図ることができます。BECCSは、再生可能なエネルギー源を利用しながら、大気中のCO2を削減する方法として注目されています。

活用事例(ユースケース)

BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)の実施事例は、世界中で研究と開発が進められていますが、まだ商業運用に至っている大規模な事例は限られています。ただし、いくつかのプロジェクトや研究が進行中であり、以下に代表的なBECCSの事例を紹介します:

  1. ACORNプロジェクト(イギリス・スコットランド): スコットランドのACORN(Aberdeen-Curtis-Ratcliffe Offshore Network)プロジェクトは、北海油田で発生するCO2をキャプチャーし、海底に貯留するBECCSプロジェクトです。このプロジェクトは、海底貯留の可能性を追求しながら、CO2排出の削減に貢献することを目指しています。
  2. NEGEMプロジェクト(ノルウェー): ノルウェーでは、エネルギー業界の主要企業が参加するNEGEM(Norwegian Full-Scale Demonstration of CO2 Capture, Transport & Storage from Waste-to-Energy Plant)プロジェクトが進行中です。このプロジェクトでは、廃棄物からエネルギーを生み出すプラントにおけるCO2キャプチャーと貯留の実証が行われています。

これらの事例は、BECCS技術の実用化に向けた取り組みの一部であり、環境保護と気候変動対策に向けた重要な先進プロジェクトです。

課題

BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)は、気候変動対策の一環として注目される技術ですが、いくつかの懸念点も存在します。以下に、BECCSに関する主な懸念点をいくつか挙げてみましょう:

  1. 食料安全保障への影響: 大規模なバイオマス生産は、農地や森林の使用を増加させ、これが食料の生産に影響を及ぼす可能性があります。競合する用途として、バイオエネルギーと食糧生産の間でリソースが競合することが懸念されます。
  2. 生態系への影響: 大規模なバイオマス生産は、生態系に影響を及ぼす可能性があります。例えば、森林伐採が生態系の多様性に与える影響が懸念されます。
  3. 土地使用変化に伴う排出: バイオマスを生産するための土地使用変化に伴い、新たな土地を開発することが必要となる場合、それに伴うCO2排出が懸念されます。新たな土地を開発する際に、それまでに土地に蓄えられていた炭素が大気中に放出される可能性があります。
  4. 技術的課題とコスト: BECCS技術自体には、高度な技術と複雑なインフラが必要であり、その導入と維持には高いコストがかかる可能性があります。また、キャプチャー技術の効率や貯蔵施設の安全性に関する課題も存在します。
  5. 長期的な持続可能性の不確実性: BECCSの持続可能性や地域ごとの適用可能性に関する不確実性があります。地域の気候条件や土壌の違い、生態系の多様性などが、技術の長期的な持続可能性に影響を与える可能性があります。

イギリスの電力会社Draxは、同社が使用する木質バイオマスが森林破壊を引き起こしているという批判を受けているほか、投資格付け会社であるS&Pは、「クリーンエネルギーインデックス」からドラックスを除外しています。

FTSE 250に含まれるエネルギー大手の同社は、バイオマス発電に対して数十億ドルの再生可能エネルギー補助金を受けているが、S&Pグローバル・ダウ・ジョーンズが手法を変更したことを受け、世界で最も環境に優しいエネルギー企業の指数から除外された。

S&Pグローバル・クリーン・エネルギー指数からの撤退は、 2010年末までに世界初の「カーボンネガティブ」エネルギー会社になると誓っていたドラックスにとって打撃となる。

引用:ガーディアン

これらの懸念点は、BECCSの実用化に向けて適切な政策、技術革新、および環境影響評価が必要であることを示唆しています。

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