第2次トランプ政権で気候変動政策はどうなる?

米国大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利を収め、気候変動対策やエネルギー政策に大きな変化が予想されています。バイデン政権が推進してきたクリーンエネルギー政策や国際的な気候変動対策から一転、国内の化石燃料生産と規制緩和が優先される見込みです。
この記事では、トランプ政権の政策が米国と世界の気候目標に与える影響を探ります。

1. 再びパリ協定からの離脱

バイデン政権が掲げた2030年までの温室効果ガス削減目標は、米国の国際的な気候リーダーシップを示すものでしたが、トランプ氏が再選すればパリ協定から再離脱する見通しです。これにより、米国は再び国際的な気候外交から後退し、温暖化防止への取り組みが弱まる恐れがあります。トランプ氏は民主党の気候対策を「新たなグリーン詐欺」と呼び、気候変動対策に対して批判的な姿勢を崩していません。

2. インフレ抑制法(IRA)の見直し

バイデン政権が成立させたインフレ抑制法(IRA)は、再生可能エネルギーや気候技術への巨額の投資を含む歴史的な法案です。しかし、トランプ政権下では、この法律の廃止または見直しが試みられるでしょう。共和党が議会の多数を握るかどうかに依存しますが、仮に全面的な撤廃が難しくても、電気自動車(EV)の税額控除など特定の分野で支援が縮小される可能性があります。共和党内でも一部議員は税額控除に慎重な姿勢を見せており、特に石油・ガス企業がより多くの恩恵を受けるような形に変更される見込みです。

引用:https://www.ciphernews.com/articles/with-donald-trump-victory-here-are-his-energy-and-climate-positions

3. 石油・ガスの増産と規制緩和

トランプ氏は「米国のエネルギーを解き放つ」と宣言し、国内の石油・ガス生産を増加させる計画です。これにより、バイデン政権が制限していた公有地での掘削やフラッキング(水圧破砕法)が拡大する可能性があります。トランプ氏の政策は、「Drill, Baby drill」(どんどん掘削しろ)という方針で、特に消費者のエネルギーコストを抑えることを重視するとしています。バイデン政権下で厳しく制限されていた沖合鉱区の売却権も緩和される見通しで、内務省が新たな計画を策定するには2年程度の時間がかかる可能性があるものの、規制緩和の方向性は明確です。

引用:https://www.ciphernews.com/articles/with-donald-trump-victory-here-are-his-energy-and-climate-positions

4. クリーンエネルギー支援の縮小

トランプ氏は、EV促進政策や排出ガス規制の見直しを公約に掲げており、EPAによる車両の排出基準を大幅に緩和する意向を示しています。EVの普及を促すインセンティブが削減されることで、自動車メーカーはガソリン車への依存度が高まる可能性があり、再生可能エネルギー支援も縮小されることが予想されます。トランプ氏は特に風力発電に否定的で、「初日」に新規洋上風力プロジェクトの許可を停止する可能性も示唆しています。ただし、EVに関してはイーロン・マスク氏の選挙期間中の大きな貢献があったことや、アメリカが自動車輸出国となり貿易赤字を回復するために重要な製品であることなどから、今後方針転換が行われる可能性もあります。

5. LNG輸出とエネルギー貿易の拡大

トランプ氏は、液化天然ガス(LNG)輸出の新規認可を停止したバイデン政権の方針を撤回し、主要アジア諸国や非FTA国への輸出申請を再開する計画を打ち出しています。これにより、ベンチャー・グローバルLNGやエナジー・トランスファーなどの企業が恩恵を受ける可能性が高まっています。

引用:https://www.ciphernews.com/articles/with-donald-trump-victory-here-are-his-energy-and-climate-positions

6. 株式市場への影響

トランプ氏の勝利が確定する前から、株式市場は彼の勝利を見込んで動き始めました。エネルギー政策の転換により、S&P500種株価指数は急上昇し、石油関連株も値を上げています。EV業界ではテスラの株価が14.8%も上昇しましたが、EV支援策が削減されれば、長期的には他のエネルギー分野に注目が移る可能性もあります。

まとめ:米国の気候政策の行方

トランプ氏が再選したことで、米国の気候政策は大きな転換点を迎えました。再生可能エネルギーやクリーンテクノロジーへの支援が縮小し、化石燃料産業の成長が促進されることが予想されます。米国が国際社会での気候リーダーシップを後退させる中、温暖化抑制目標の達成が一層困難になるかもしれません。

出典・参考:

MIT Technology Review: https://www.technologyreview.jp/s/349483/the-us-is-about-to-make-a-sharp-turn-on-climate-policy/

Bloomberg: https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-11-06/SMJ7YAT0G1KW00

Ciphernews: https://www.ciphernews.com/articles/with-donald-trump-victory-here-are-his-energy-and-climate-positions

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