GWP(Global Warming Potential、地球温暖化ポテンシャル)とは、特定の温室効果ガスが地球温暖化に与える影響を二酸化炭素(CO2)と比較して評価するための指標です。GWPは、あるガスが一定期間(通常は100年)にわたってどれだけの温室効果を持つかを示します。これにより、異なる温室効果ガスの温暖化影響を共通の尺度で比較することができます。

GWPの計算方法

  1. 特定のガスの放射強制力を計算:放射強制力とは、温室効果ガスが地表に与える追加のエネルギー量のことです。各ガスが吸収し、再放出するエネルギーの量を計測します。
  2. そのガスが大気中にとどまる期間を考慮:各温室効果ガスは、大気中で異なる期間存在します。例えば、二酸化炭素は非常に長い期間大気中にとどまるのに対し、メタンは比較的短期間で分解されます。
  3. 基準ガス(通常は二酸化炭素)の影響と比較:各ガスの放射強制力と大気中にとどまる期間を組み合わせ、そのガスの温暖化影響を二酸化炭素と比較します。二酸化炭素のGWPは1と定義され、他のガスはそれに対する相対値として示されます。

具体例として、主要な温室効果ガスのGWPは以下の通りです:

  • 二酸化炭素(CO2):基準としてGWPは1。
  • メタン(CH4):GWP(100年)は25。これは、100年の期間で1トンのメタンが約25トンの二酸化炭素と同じ温暖化効果を持つことを意味します。
  • 亜酸化窒素(N2O):GWP(100年)は298。これは、100年の期間で1トンの亜酸化窒素が約298トンの二酸化炭素と同じ温暖化効果を持つことを意味します。
  • フロン類(F-gases):これらのガスは非常に高いGWPを持ちます。例えば、HFC-134aのGWP(100年)は1,430、CF4のGWP(100年)は7,390です。

このGWPを用いることで、異なる温室効果ガスの排出量を二酸化炭素換算(CO2e)で統一的に評価し、総合的な温暖化影響を評価することができます。

GWP(地球温暖化ポテンシャル)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)によって決定および報告されます。IPCCは、世界中の数千人の科学者や専門家から成る国際的な組織であり、気候変動に関する科学的な理解を深めるための報告書を定期的に発表しています。

GWPの決定プロセス

科学的研究とデータ収集

    • 世界中の研究機関や大学で行われる大気化学、気象学、環境科学などの分野の研究から得られるデータを収集します。
    • 各温室効果ガスの放射強制力、寿命、化学的性質などのデータが集められます。

    専門家による評価

      • IPCCの専門家グループが、収集された科学的データを詳細に評価します。
      • 温室効果ガスの大気中の挙動、地球温暖化への影響、寿命などを考慮して、GWPを計算します。

      報告書の作成とレビュー

        • 収集されたデータと評価結果に基づき、IPCCは気候変動に関する評価報告書を作成します。
        • これらの報告書は、科学者や政府、NGOなどの関係者による徹底的なレビューを経て、最終的に公表されます。

        定期的な更新

          • 科学的理解が進むにつれて、新しい研究結果やデータに基づき、GWPの値は定期的に更新されます。
          • 最新のIPCC報告書に基づいて、各温室効果ガスのGWPが見直されることがあります。

          このプロセスを通じて、GWPは国際的に認められた科学的基準に基づいて決定され、各国の政府、企業、研究機関などが温室効果ガスの排出量を評価・報告する際に使用されます。IPCCの評価報告書は、気候変動に関する政策決定や対策立案の重要な基礎資料となっています。

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