EVとロバが共存する国 モロッコの再エネ事情 太陽光とグリーン水素に熱視線

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アフリカ大陸、モロッコのサステナビリティや脱炭素に関する最新の情勢をルポ形式で紹介します。第5回目の今回は、クライメートテックの文脈でも注目を集めるグリーン水素を含む再生可能エネルギーについてです。

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  1. 資源輸入国のモロッコ
  2. モロッコ政府の再エネ開発
  3. グリーン水素製造に大きなポテンシャル
  4. 各国・企業との提携
  5. モロッコについてもっと知りたい方

資源輸入国のモロッコ

モロッコは石油や天然ガスを生産しないため、隣国のアルジェリア、リビア、エジプトなど資源の豊富な国々からエネルギーを輸入しています。近年、自動車製造業界などで外国からの投資が増え、国内の産業が活気づいています。しかし、世界的なエネルギー価格の上昇により、モロッコの国際収支は悪化しており、エネルギーの安定供給は最優先課題となっています。
モロッコのエネルギーミックスは、2021年時点で石油が51.7%、石炭が36.3%、天然ガスが3.2%を占めています。再生可能エネルギー(再エネ)の利用はわずか8.5%に過ぎません。

モロッコ政府の再エネ開発

欧州では、脱炭素化社会を目指す中で、モロッコの再エネの輸出に関心が寄せられています。モロッコ政府は、施設建設用地の確保の容易さや大西洋からの強風など、再エネ開発の強みをアピールポイントとしています。
2021年時点で、再エネ設備の容量は3,950メガワット(MW)で、国内の発電設備の37%を占めています。水力発電が1,770MW(16.57%)、風力発電が1,430MW(13.4%)、太陽光発電が750MW(7.03%)です。
再生可能エネルギーの発電施設は、主に水力、風力、太陽光発電で構成されています。
水力発電:北部と東部に20カ所あり、標高4,000メートル級のアトラス山脈エリアを含みます。
風力発電:全国13カ所に点在し、2022年までに新規プロジェクトで1,120MWの追加を計画しています。「NOOR太陽光発電複合施設」は世界最大級の発電複合施設として知られており、総発電容量は580MWで、2030年までにさらなる拡張が計画されています。

中には、日本企業が参加しているプロジェクトも含まれます。


これら施設の中には、日系企業を含め外資が関与してきたものも含まれる。例えば住友電工は、2016年からの5年間の契約で、前述のNOOR太陽光発電複合施設での太陽光発電プラント運用実証を担った。また三井物産は、EDFリニューアブルズ(注1)と連携して、北東部の都市タザでの陸上風力発電事業を推進している。当該風力発電所は、2022年の稼働に向けて2020年に建設が開始された。

JETRO

グリーン水素製造に大きなポテンシャル

出典:AL-MONITOR

国際再生可能エネルギー機関 ( IRENA )が 2022 年 1 月に発表した報告書によると、モロッコは、米国、サウジアラビア、オーストラリア、チリと並んで、競争力のあるグリーン水素を生産できる可能性のある上位 5 か国の中にランクされています。

2019年、モロッコのエネルギー省は国家水素委員会を設置し、 2021年にはグリーン水素に関するロードマップが作成されました。そ
れによると、資源とその派生品に対する国家需要は2030年に4TWhに達し、再生可能エネルギーで2GWが必要になると予想されています。
同期間の輸出需要は10TWhと推定され、総投資額は2030年までに100億ドル、2050年までに750億ドルに達すると推定されています。

モロッコがグリーン水素製造国として注目されているのは、いくつか理由があります。

・サハラ砂漠をはじめ、太陽光や風力発電の適地をたくさん抱えており、大量かつ安価に再生可能エネルギー由来の電気を発電することが可能であること

・世界のリン酸塩鉱床の 70% を占めるモロッコは、世界トップクラスの肥料生産国および輸出国である一方、肥料生産に不可欠なアンモニアは輸入に依存してきた。グリーン水素が国内で製造されるようになれば、水素→アンモニアと転換できるため、既存主要産業である肥料生産の供給網を自国で完結できるようになること。

各国・企業との提携

モロッコは脱炭素ビジネスを加速させるために各国政府、企業とパートナーシップを進めています。以下はその一例です。

出典:JETRO
出典:JETRO

モロッコについてもっと知りたい方

JERTO制作のこちらの動画が面白かったです。クスクスを食べるシーンなど、まさにあんな感じでした。
今こそモロッコへ! グリーンエネルギーに商機アリ

【連載】EVとロバが共存する国 モロッコのサステナビリティ事情

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