クライメートニュース Pick up 10/8

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クライメートニュースPickup では、気候変動やクライメートテックに関連する国内外のニュースをピックアップしてお届けします。
今回は、「削減貢献量」をテーマにまとめます。

  1. 脱炭素の適正評価、削減貢献量の考慮「不可欠に」-GPIF理事長
  2. 脱炭素の新評価軸作りが本格化、削減貢献量を加味-経産省が主導
  3. 製品ライフタイムにおけるCO2排出削減と社会へのCO2削減貢献量を投資判断基準とするインターナルカーボンプライシング制度を試行導入
  4. G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合 産業の脱炭素化アジェンダに関する結論
  5. 解説

脱炭素の適正評価、削減貢献量の考慮「不可欠に」-GPIF理事長

 脱炭素を巡っては、どれだけ温室効果ガスを排出しているかという「温室効果ガス(GHG)プロトコル」を用いることが国際的に主流となっている。削減貢献量はこの基準とは異なり、自社の製品が使用されることで排出量の削減にどれだけ貢献したかを定量化する考え方だ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の宮園雅敬理事長は2日、経済産業省が主催する脱炭素関連イベントで講演し、脱炭素技術の適正評価に当たっては「削減貢献量」を考慮することが不可欠との認識を示した。

Bloomberg

脱炭素の新評価軸作りが本格化、削減貢献量を加味-経産省が主導

経産省が主催する7日の第1回「国際GX(グリーントランスフォーメーション)会合」では、民間企業や日米欧の政策当局者が参加し、「削減貢献量」を主要議題の一つに取り上げる。

これは、自社の製品やサービスが使用されることによって、排出量削減にどれだけ貢献したかを定量化する考え方で、国内企業ではパナソニック日立製作所が自社の脱炭素目標に取り入れている。
ただ、削減貢献量を巡っても課題がある。比較対象によって貢献量が大きく変わり得るため、見せかけの環境配慮を意味する「グリーンウォッシュ」につながりかねない側面がある。

Bloomberg

製品ライフタイムにおけるCO2排出削減と社会へのCO2削減貢献量を投資判断基準とするインターナルカーボンプライシング制度を試行導入

パナソニック株式会社は、「カーボンニュートラル(脱炭素)」と「サーキュラーエコノミー(循環経済)」に貢献する事業の競争力強化を加速させるため、自社バリューチェーン全体におけるScope3のCO2排出削減および社会へのCO2削減貢献量を投資の判断基準とするインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を2023年度から試行導入します。今回試行導入するパナソニックのICP制度では炭素価格を20,000円/t-CO2に設定し、くらしアプライアンス社で先行導入した後、2024年度以降に順次導入拡大を目指していく予定です。

Panasonic

G7札幌 気候・エネルギ・環境大臣会合 産業の脱炭素化アジェンダに関する結論

事業者が、自らの及びバリューチェーン全体における温室効果ガス排出ネット・ゼロへの道にコミットすることを奨励するためには、ある系における脱炭素ソリューション提供による、ある事業者による他の事業者の排出削減への貢献、すなわち、「削減貢献量」を認識することも価値がある。

共通の理解を可能とし、削減貢献量が不適切に用いられるリスクを低減させるため、削減貢献量の測定に関する共有された国際標準が推奨される。

環境省 G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合より抜粋

解説

このところ、気候変動やサステナビリティの文脈で「削減貢献量」(英語ではAvoided Emissions)という言葉を耳にする機会が増えてきました。去年開催された札幌でのG7環境大臣会合の成果文書にも、削減貢献量を認識することに価値があると記載されています。それは、現在の国際的な主流であり、どれだけ温室効果ガスを排出しているかを基準とする「GHGプロトコル」を用いた場合、以下のような事例が起きてしまうからです。

例えば、温室効果ガスを年間10トン排出する旧型パソコンを販売していたメーカーが、排出量が8トンで済む新製品の開発に成功した場合、削減貢献量の切り口では1台当たり2トンの削減と主張できる。ところが、そのパソコンが多く売れてしまうと、結果的に総排出量が増加してしまうこともある。

Bloomberg

他の例として、テスラを考えてみます。テスラは電気自動車(EV)をたくさん生産し、販売することで、年季の入ったガソリン車からの買い替えを促しています。その結果として、自動車業界全体から排出される二酸化炭素の量を減らしています。ところが、電気自動車(EV)が売れれば売れるほど生産量は増えるため、テスラ単体で見た場合の総排出量は増加します。つまり、「地球全体で見たときに、環境に良いことをしているはずなのに、一社単位で見たときにはCO2排出量が増加している」といった矛盾が生じてしまいます。こうした取り組みを評価するのに必要なのが、「削減貢献量」の考え方です。

こちらの記事も
削減貢献量とは
インターナルカーボンプライシング制度(ICP制度)とは
GHGプロトコルとは

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