高層ビルを「ランク付け」ニューヨークで進むエネルギー効率の「見える化」
ビルをランク付け エネルギー効率の「見える化」
高層ビルが立ち並ぶアメリカ・ニューヨーク。街を歩いていると、ビルの入り口には、目立つように「ランク」が大きく張り出されています。こちらのビルは91点、「A」ランクを獲得した優等生です。ただし、91の下をよく見ると、過去の点数が記載されており、2020年は77点のBランクだったことがわかります。
ニューヨーク市は、脱炭素の取り組みとして、25,000 平方フィートを超える特定の建物の所有者に、建物のエネルギー効率評価ラベルを取得し、建物の入り口付近に表示することを法律で義務付けています。
「D」でも掲示 脱炭素に向け法整備
エネルギー効率の良いビルほど高い点数がつき、上から順にA~Dにグレード分けされます。古いビルでは、写真のように「D」ランク、8点という評価もありました。
ニューヨーク市では、建物のエネルギー使用が温室効果ガス排出量の 3 分の 2 近くを占めていますが、個々の建物のエネルギー性能については、これまで把握されていませんでした。
高い目標と厳しい規制 今後罰金も
脱炭素に大きく舵を切ったのは、2019年。気候変動動員法 (CMA) を可決され、こうした取り組みが加速しました。ニューヨーク市は、2050年までにCO2を含む温室効果ガスの排出を80%削減するという野心的な目標を掲げ、2025年からは、決められた二酸化炭素排出量の上限を超えた量に応じ、罰金が科せられます。金額は1トン当たり年間268ドルで、ビルによっては数千万円に及ぶ可能性があります。
取材後記
気候変動問題が身近に感じられない理由の一つとして「目に見えにくく、測定しにくい」という点があげられます。アルファベットと数字でランク付けし、わかりやすい形で「見える化」することは、市民のサステナビリティと脱炭素社会への関心や理解を深めていると感じました。
LEED認証を受けた環境配慮型のビルは、自らそうした認証を掲示しています。ニューヨーク市の場合、行政主導で「義務化」することで、Aランクのビルだけでなく、本来は掲示したくないであろうDランクのビルも「見える化」されている点がユニークでした。