クライメイトテック(Climate tech)とは
近年、気候変動への対策や緩和策に焦点を当てた新たな技術が注目を集めています。それが「クライメイトテック(Climate tech)」です。クライメイトテックとは、気候変動への対策や影響の軽減を目的とした技術の総称です。日本では、「クリーンテック」「気候テック」「脱炭素テック」とも呼ばれています。耳なじみのない言葉ですが、アメリカでは、主に「気候変動に関連するビジネスを行うスタートアップの総称」として使われることが多いです。
PWCは、クライメイトテックについて、以下のように定めています。
クライメイトテックとは?
クライメイトテックとは、温室効果ガスの排出削減、または地球温暖化の影響への対処に明確に焦点を当てた技術と定義される。クライメイトテックの応用は、セクターを問わず、以下の3つのグループに大別できる:・排出を直接的に緩和または除去するもの
・気候変動の影響への適応を助けるもの
・気候に関する理解を深める
引用:PWC
クライメイトテックは、再生可能エネルギー、エネルギー効率の向上、二酸化炭素の吸収と貯留、持続可能な農業などの様々な分野に広がっています。様々な分類の方法がありますが、クライメイトテックニュースでは、以下の9つにカテゴリを分けて、整理しています。
1.再生可能エネルギー
太陽光や風力、水力、地熱、などの自然エネルギーを利用して電力を生み出すことで、化石燃料に頼らない持続可能なエネルギー供給が可能になります。
2.バッテリー・グリッド
再生可能エネルギーの効率的な利用と供給の安定性を実現するために、バッテリー技術が活用されています。また、電気自動車(EV)の普及に伴い、バッテリーの需要は今後もますます増加し続けます。「グリッド」は、「電力網」とも呼ばれ、電気を供給するためのシステムやネットワークのことを指します。再生可能エネルギーで生成した電気をいかに効率よく貯蓄・供給するかも重要なポイントです。
3.モビリティ
モビリティは、交通システム全体に関わるさまざまな技術やサービスを指す言葉です。気候変動の課題への対応として、クリーンで持続可能なモビリティソリューションの開発と導入が重要な役割を果たしています。電気自動車(EV)のほかにも、マイクロモビリティと呼ばれる電動スクーターや自転車、シェアリングサービスなど、小型の個人移動手段も含まれます。
4.農業・食物・水
私たちの生活に欠かせない食べ物と水に関する領域です。農業分野は、アグリテック(Agritech)、食物分野は、フードテック(Foodtech)とも呼ばれています。アグリテックは、農業における技術の革新とデジタル化を促進する分野です。これには、農業における効率性の向上、持続可能性の確保、生産性の向上などが含まれます。フードテックは、食品生産から消費までの供給チェーンにおいて、技術の導入と革新を推進する分野です。食品の安全性、持続可能性、栄養価の向上、廃棄物削減などを目指します。水分野は、持続可能な水供給と浄化に関する技術と取り組みが中心で、水の枯渇、浄水、水質管理、排水処理などに対する課題に対処する技術が開発されています。
水資源管理は、持続可能な水供給と浄化に関する技術と取り組みを指します。水の枯渇、浄水、水質管理、排水処理などに対する課題に対処するため、以下のような技術が開発されています。
5.カーボンマネジメント
CCUS (Carbon Capture, Usage and Storage)と呼ばれる二酸化炭素の吸収・使用・貯留技術は、特に注目を集める分野です。大気中の二酸化炭素を効率的に吸収し、地下や海底などに貯留することで、温室効果ガスの排出量を削減することが可能です。また、DAC(Direct Air Capture)と呼ばれる二酸化炭素を直接空気中から取り込み、再利用する技術も開発されています。DACは、既に空気中に排出されてしまった過去の二酸化炭素を遡って回収できるという点で、期待を集めています。
6.水素・マテリアル
水素とマテリアルは、エネルギーおよび産業分野において重要な役割を果たす技術や材料です。水素は燃焼すると水しか生成しないため、二酸化炭素(CO2)を排出せず、環境に優しいエネルギー源として注目されています。また、燃料電池や水素自動車、鉄の水素還元など、様々な分野で活用できる点も、水素が注目を集める理由の一つです。
マテリアルでは、 生物由来の材料で、再生可能資源や廃棄物を活用して開発されるバイオマテリアルや、触媒は、光のエネルギーを利用して化学反応を促進する材料です。また、環境浄化、水素製造、エネルギー変換などの分野で使用される光触媒は、エネルギー効率や環境負荷の低減に寄与します。
7.インダストリー
産業活動や製造業に関連するさまざまな技術やプロセスです。生産性の向上、効率化、持続可能性の確保などが含まれ、具体的には工場のスマート化や効率化、建物のエネルギー効率化などが挙げられます。
8. データ・金融
データを活用したサプライチェーンの効率化、衛星画像を用いた環境アセスメントやメタン漏れの検出技術などが含まれます。また、金融分野では、スコープ1~3の測定や報告、カーボンクレジットの売買、異常気象に対応した保険サービスなどが挙げられます。
9.リサイクル
プラスチックや貴金属などのマテリアルリサイクルのほか、製造業やデータセンターから排出される廃熱の活用なども含まれます。また、太陽光パネルやEVのバッテリーなど、急速に普及している再エネ関連製品は、近い将来、大量に寿命を迎え、産業廃棄物となります。こうした製品のリサイクルに向けた技術開発やプラットフォームの整備も既に始まっています。
クライメイトテックと総称する理由
様々な分野の技術をクライメイトテックとして一括りにすることに違和感を覚えるかもしれません。しかし、気候変動問題はスケールが大きいこと、エネルギー、交通、建築、農業など、様々な分野に影響を及ぼしていることを踏まえると、総合的な解決策を追求する必要があります。また、エネルギーとモビリティ、農業とデジタル技術、材料と廃棄物処理など、異なる領域の統合によって新たな可能性が生まれます。
評価額が 10 億米ドルを超える、いわゆる「ユニコーン」と呼ばれるクライメイトテックスタートアップも既に出てきています。
HolonIQによると、2023 年 1 月 時点で、世界中に 83 社のクライメートテックユニコーンがあり、その評価額は合計で 1,800 億ドル以上となっています。